第3話 宝物庫での運命の選択
ルビは、軽装備女衛兵の監視下で宝物庫に来ていた。
(ろくな物が無いな。これが本当に一国の宝物庫なのか?まさかここまでこの国の財政が圧迫されているとはな……そういえば大魔王軍のモンスターが宝物庫に侵入し、お宝の大半を奪い去ったという噂があったが本当だったということか。どちらにしろ困ったぞ。)
「あ、あの……本当にこの中から選ばないといけないのですか?」
「宝物庫より1点だけと聞いております。」
女衛兵は、気持ちは分かるとばかりに同情した目で見つめ返してくる。
「宝物庫ってここだけですよね?」
「地下にあるのはありますが……私の先輩の話では、そちらもろくな物は残っていないとらしいですよ。」
(う~ん。ろくな物が残ってないのか~でも駄目で元々だし、見るだけ見てみるか。)
「とりあえず見せてもらえますか?」
「はい。ではこちらです。ルビ様。」
女衛兵は、にっこりと微笑み、優しく対応してくれる。
(ああ、婚約破棄されたばかりの男の目の前で、その優しい微笑みは犯罪ですよ。こちらに気があるのかと勘違いしたくなるほどに俺の心は、弱くなっているのですからね!)
薄暗い地下、地下ならではの独特のカビ臭さが鼻につく。
「まだ奥ですか?」
「はい。実は私も来るのは初めてなのです。確か……この扉の奥と聞いていたのですが……」
(おいおい、大丈夫かな?)
ルビは、不安になりながらも女衛兵の後ろ姿を見つめながらついて行く。
「あっ!このマークです。この扉の奥だと思います。」
ギ、ギギギギィィィィ!
「錆び付いていて硬い!も、申し訳ございませんが、お手伝いをお願いしてよろしいですか?」
「そ、そうですね!任せて下さい。」
ルビと女衛兵は、ホコリまみれになりながらも扉に力を注ぎこむ!
(地下も見せてとお願いした罪悪感が……衛兵お姉さん!ホコリまみれにさせてすみませんっ!)
ギギギッ!ガッタン!
「開いたぁ!」
「ケホケホッ!ルビ様、ありがとうございます。ケホッ!」
ルビと女衛兵は、体に付着したホコリをはたきながら宝物庫の中へと入って行く。
「少し待ってください。明かりを点けますね。」
女衛兵は、そう言うと入口のすぐ横にある魔具に触れる。
すると、その魔具からやんわりと明かりが灯りだすのだった。
「お待たせしました。ごゆっくりどうぞ……ケホケホ!」
「こ、これは!?」
(おいおいおいおい!封印付の剣や鎧、盾とどれを見てもヤバそうな物ばかりだ!)
「あの~どれをもらってもよいのですか?」
ルビが、恐る恐る尋ねる。
「えっ?は、はい。そのはずですが……」
女衛兵は、不思議そうに首を傾げた。
「そ、そう……」
(ここってどう見ても呪い系アイテムの保管庫だぞ!どうする?こんな時にアーネがいたらな……あいつって性格は、アレだけど知識は豊富だからな。)
「あ、あの……後日に取りに来るとか駄目ですか?」
「えぇ……」
(今あからさまに嫌な顔したよね!そうだよね!こんなホコリまみれは、今日だけにしたいよね~はい!分かります!ごめんなさい!)
「あ、あはは!冗談です……」
(もういい!よく考えたらアーネに借りを作るなんてありえない!いま選ぼう!とにかく旅には、お金が必要だ。お金になりそうな物はと……)
ルビは、宝物庫の隅から隅まで用心深く探索する。
(やっぱり武器や防具が多いな。でもどれも封印付きで……あれ?)
宝物庫の最奥にとても厳重に封印された宝玉らしき物が、台座に置かれていた。
「これって……宝玉?」
(これだぁぁ!高く売れそう!)
ルビは、自身の顔が怪しい程にんまりとなっていることに気づき、平静を装う。
「じゃあ、これにします。」
「分かりました。気に入った物が見つかって良かったですね。」
女衛兵は、ホッとした表情を見せた。
「案内任務、お疲れさまです。」
「こちらこそ。」
2人は小さな達成感に満足し、にっこりと微笑み合うのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます