エピローグ

続いていく未来(完結)



 今日から高校二年生だ。


「いってきまーす!」


 僕、影咲希かげさきケータは元気よく家を出た。


「いってらっしゃい」

「コータくんもそろそろ会社でしょ。ほら、ハンカチ忘れてる」

「あ、いけね……ありがとう、真白」

「ネクタイも曲がってる」

「どうも……あはは」

「ふふ」


 ……背後から、いい年してイチャイチャしてる父さんと母さんの様子が伝わってきた。


 本当、いつまで経っても仲いいよなぁ。


 ――などと思いつつ通学路を歩いていると、前方から一人の女性が歩いてくるのが見えた。


 スーツ姿で、長い黒髪の清楚系美人。

 近所に住んでいるOLで、名前は進藤しんどう花音かのんさん。


 この間、偶然知りあったんだけど、なんと僕の父と彼女の母が高校の同級生だったみたいで、すごく驚いた。


「あ、ケータくん、おはよう」

「おはようございます、花音さん」


 僕は緊張気味に挨拶する。


 美人だし、優しいんだよな、花音さん。

 彼女は母親とあまり上手くいってないらしくて、進学で色々苦労したらしいんだけど、そのためなのか、年齢以上に大人びてる感じ。


 リアル年齢だと、僕より六つ七つ上だったはずだ。


「今日から高校二年生だね。おめでとう」

「ありがとうございます」

「はい、これプレゼント」


 真新しいハンカチだった。


「えっ、わざわざ……ありがとうございます!」

「ふふ、ケータくんって、なんだか弟みたいで可愛いもの」


 微笑む花音さんから、ふわりといい匂いに漂ってくる。

 ドキドキしてしまった。


 でも、花音さんから見たら、僕なんて子どもだろうなぁ……。


 あ、でもでも、僕の父さんは十二歳も年上の母さんと結婚してるんだし、やっぱり年の差なんて関係ないか。


 ちなみに両親は今もラブラブだ。


 ときどき、二人が仲良すぎて、僕の方が気を利かせて席を外すことも……。


 まあ、いつまでも仲がいい夫婦っていうのは憧れる……かな。

 僕にもいつか、そういう相手が現れるのかな。


「ん、どうかしたの?」

「い、いえ、その……花音さんに見とれちゃって……あ」


 しまった、焦って本音をストレートに言ってしまった。


「えっ、や、やだなぁ……あはは」


 花音さんがたちまち赤くなった。


 彼女は奔放な母親(この間離婚してバツ4になったらしい)を見て育ったのが原因なのか、ものすごく潔癖なんだそうだ。

 恋愛絡みのネタは聞いただけで恥ずかしくなって、テンパってしまうんだとか。

 

 今どき珍しいくらい純情な人なんだろうな。

 そういうところも好きだなぁ……。


「ちょっとちょっと! 朝から何イチャイチャしてるのよ!」


 後ろから声が響いた。

 特徴的な赤い髪をショートヘアにした女の子が駆け寄ってくる。


りつ……」


 彼女は赤羽根あかばね律。

 僕の中学時代の後輩だ。


 小学校まで外国にいた帰国子女で、四か国語を操り、成績優秀スポーツ万能容姿端麗……という、まさに完璧超人な女の子だった。


 っていうか――あれ?

 僕と同じ高校の制服を着ているような……?


「今日から同じ高校だね。よろしく、影咲希先輩」

「え、律も同じ高校だっけ……」

「そ。びっくりさせようと思って、今日まで黙ってたのよ。どう、あたしの制服姿、似合うでしょっ!」

 

 胸を張る律。


「うん、可愛い」

「ふふふ、素直になっていいのよ。可愛いって言ってくれても――って、言ってた!?」

「私も可愛いと思うよ、りっちゃん」

「りっちゃん言わないで! ライバルなんだから!」

「ライバル?」

「こ……こ……いの……ライバル……」


 ボソッとつぶやく律。


 今、なんて言ったんだろう……声が小さくてちゃんと聞き取れなかった。


「せっかくだから三人で一緒に行きましょ。私はこの先の駅までだけど」

「はい」

「りょーかい!」


 花音さんの提案に僕と律が同時にうなずく。


 僕が真ん中で、右に花音さん、左に律。

 花音さんは恥ずかしそうに僕から微妙な距離を取り、逆に律は妙に積極的に僕にくっついてくる。


 そうして、僕たちは歩いていく。


 爽やかな風が吹く中を、歩いていく――。


                        【終わり】







これで完結です! ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!

***

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