9 桐生計と天ヶ瀬ルル、初めての……。3(桐生視点)


 ――しばらくの間、肌と肌が触れ合う音や、激しい息遣い、甘い喘ぎ声などが部屋の中で淫靡に響いていた。


 やがて桐生は一通りの行為を終えて、ルルと見つめ合っていた。


「とうとう……しちゃったね」

「嬉しいです……僕、ずっとルル先輩とこうなりたかった」


 二人は裸のまま寄り添って寝ていた。


 激しい交わりの余韻は、まだ体のあちこちに残っている。

 下半身には甘痒い快感が残留していて、体中を爽快感が駆け巡っているようだ。


「私も……だよ。計とこうなれたらいいな、ってずっと……」


 言いながら、ルルの目から一筋の涙がこぼれる。


「ルル先輩……」

「あはは、なんだろ……ホッとしたっていうか、気持ちが緩んだのかな……なんか涙が勝手に……」


 恥ずかしそうに目元をこするルルが愛おしくて、桐生はそっと抱きしめた。


 相手は初めてじゃない、という事実に対して、まったくわだかまりがないわけではなかった。


 正直、『ルル先輩が処女だったらよかったのに』と悔しく思ったことは、何度もある。


 だが、実際にこうして行為を終えてみれば、そんなことは頭から消え去っていた。


 今はただ、圧倒的な充足感と多幸感だけがあった。


「……もう、そんなにジッと見ないでよ。恥ずかしいよ」


 ルルがはにかんだような笑みを浮かべた。


「してる最中はあんまり気にならなかったけど、終わった後は、ちょっと恥ずかしい……あんまり見ないでね」

「うっ、が、我慢します……」


 ルルの綺麗な裸をもっと見ていたかったが、相手が恥ずかしがっているので自重することにした。


「もうちょっと慣れたら、計に見せてあげる」

「本当ですかっっっ」

「いや、それはがっつきすぎ」

「あははは」

「もう」


 ようやく、いつも通りの会話になってきた。


 これから先、また不安を感じたり、自信をなくしたり、彼女の過去に対するわだかまりを持ったりするかもしれない。


 それでも――傍にルルがいてくれるから、きっと大丈夫だと思う。


 彼女と一緒に過ごせる『今』を大切にして、過去を乗り越え、未来を紡ぐ――。


 そうやってルルと年月を重ねていきたい。


 桐生は今、心からそう思うのだった。






***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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