7 桐生計と天ヶ瀬ルル、初めての……。1(桐生視点)


 桐生はルルとクリスマスイブに初めてのキスを交わしてから、少しずつ積極的になっていた。


 自分がもっと踏みこんでも彼女は受け入れてくれる――そんな実感と自信が芽生えたのかもしれない。

 デートのたびにキスをしたり、軽く胸や腰に触れたり……以前なら絶対にしなかった愛情表現をするようになっていた。


 そして、今日。

 県外で下宿しているルルの元に遊びに行った日――。


「じゃあ、また近いうちにね」

「はい、また」


 デートを終え、ルルのアパートで一段落した後、桐生はそろそろ帰りの電車に乗る時間になった。


 だが、駅に向かおうとしたところで足が止まる。


「離れたくない――」

「えっ」

「もうちょっとだけ……ルル先輩と一緒にいたいです」

「計……?」

「今日はルル先輩と……最後までしたいです」


 彼女の肩を抱き、まっすぐに告げる。

 ルルは珍しく照れたような顔をそた。


「や、やだなぁ、ストレートすぎ」

「あ、すみません……」


 今度は桐生が照れる番だった。

 いくらなんでも、表現が直接的すぎる。


 つい気持ちが燃え上がってしまったのだ。


「ふふ、でもそうやって意思表示してくれるのは嬉しい」


 ルルが微笑み、桐生にキスをした。


「私も……最後までしたい」


 と、はにかみながら、そう付け加えた。




「私、シャワー浴びてくるから」


 ルルが浴室に行き、桐生は手持無沙汰に待っていた。


 彼女が終わったら、今度は桐生がシャワーを浴び、その後にはいよいよベッドで『ことに及ぶ』のだろう。

 想像しただけで心臓が痛いほどに鼓動を速める。


 期待感や興奮はあったが、それ以上に緊張していた。


 何せ桐生は童貞である。


 上手くできるだろうか。

 ちゃんと入れられるだろうか。

 ルル先輩を満足させられるだろうか。


 そんな不安が次々に浮かんでくる。


 一方でルルが妙に落ち着いていることも気になってしまった。

 彼女は、桐生と違って性体験がある。


 きっと元彼を相手に何度もしてきたことだから、今さら緊張なんてしないんだろう。


(考えちゃ駄目だ、考えちゃ……)


 桐生は嫉妬心を押し殺した。


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