5 魅花は阿鳥に復讐する3(魅花視点)
そして一週間後。
魅花はふたたび阿鳥のアパートを訪ねた。
「お、おい、魅花! てめえ、なんてことをしやがったんだ!」
「連絡でも来た、阿鳥さん?」
「……向こうの旦那がすげー剣幕で怒ってきてる。マジで慰謝料支払うことになるかも……ふざけんなよ……くそ……」
阿鳥はすっかり意気消沈しているようだ。
ざまあみろ、と魅花は胸がスッとする気分だった。
「他の家庭にも順番に画像をプリントして送っておいたから。そのうち、他の旦那さんもあんたのところに怒鳴りこんでくるんじゃない?」
「な、なんだと……!?」
「この前、言ったでしょ。全部の家庭に送るって」
「お、脅しじゃなくて本当にやったのかよ、てめぇ!」
「当たり前でしょ。あんたを許すわけないじゃん。徹底的にやらせてもらうからね」
「てめぇ、ふざけんな!」
阿鳥が怒声を上げる。
「きゃあっ……!?」
次の瞬間、頬に熱い痛みが訪れた。
阿鳥に殴られたのだ、と気づく。
「てめぇ、何すんだよ!」
魅花も語調を荒げて怒鳴る。
「くそっ、他の女の分もだと……じゃあ、慰謝料どんだけになるんだよ……くそっ、くそっ――!」
阿鳥はそれ以上殴ってこようとせず、その場にうずくまって頭を抱えていた。
めちゃくちゃに頭をかきむしったり、その場にある家具を殴ったり、壁を殴ったり――もう完全にパニック状態だ。
家具はへこみ、壁の一部に穴が空いていた。
「いててて……女の顔を思いっきり殴りやがって、くそが……!」
魅花は魅花で頬を押さえながら毒づいている。
やり返してやりたいが、さすがに腕力では敵わない。
とはいえ、気持ちはすっきりしていた。
これで阿鳥は破滅的なダメージを受ける。
彼が手を出した人妻は全部で五人もいた。
呆れるばかりだが、すでに全員分の証拠をつかみ、それぞれの家を見つけておいた。
あとは相手方の夫に渡るように、会社から帰ってきそうなタイミングで郵便ポストに証拠の書類を入れておいたり……と中々大変だったが、おかげですべての家庭に、阿鳥がやったことを伝えられたはずだ。
「ま、せいぜい頑張りなよ。親が代わりに慰謝料払ってくれたらいいね?」
言いながら、魅花は笑いが止まらない。
阿鳥が親と不仲なのは知っていた。
彼を大学に行かせるために家計がかなり苦しいとも。
だから、阿鳥に請求された慰謝料を親が肩代わりするのはまず無理だろう。
「くそっ、魅花てめぇ……!」
そのときインターホンが鳴った。
「須山ってのは、お前だな! うちの雅美が世話になったそうじゃねーか!」
戸口から怒鳴り声が聞こえてくる。
魅花が追加で画像プリントを送付した家の一つ――そこの夫がやって来たのだ。
どうせなら、阿鳥が彼にどう突き上げられるか、見て行ってやろう――。
魅花はゾクゾクするような興奮を感じていた。
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