4 魅花は阿鳥に復讐する2(魅花視点)


「さっきも言ったじゃない。旦那さんに送るの。プリントして郵送すればいいかな? ふふ、既婚者が相手だと『自由恋愛』ってわけにはいかないからね。結構な金額の慰謝料――あんた、自力で払える?」

「い、慰謝料……!?」


 阿鳥が言葉を詰まらせた。

 いつもヘラヘラしていて、いい加減な彼でも、さすがに慰謝料という単語にはたじろいだらしい。


「ぐっ……最悪、親が払ってくれる……」


 だが、それでも阿鳥は小さく鼻を鳴らして反論する。

 魅花も同じく鼻を鳴らした。


「親ぁ? カッコ悪いね。でもさ、親に頼んでも払いきれるかな?」

「……さすがに払えるだろ」

「一人分じゃないんだけど?」


 魅花がさらに見せたのは、別の画像。


 さっきと同じくラブホテルに入ろうとしている阿鳥と人妻の姿だ。

 先ほどとは別の人妻である。


「お前――いつの間に!?」

「あたしの処女奪って、ヤリ逃げしておいて……ただで済むと思わないでよ」


 魅花がニヤリと笑い、背を向けた。


 後は、仕上げに移るだけだ。

 これらの証拠を各家庭に送付する。


 これから阿鳥を襲うであろう修羅場の数々を想像すると楽しみで仕方がなかった。


「ま、待て、魅花! 落ち着け!」

「あたしは落ち着いてるけど? 慌ててるのはあんたの方だろ」


 言い放つ魅花。


「で、どうするの?」

「わ、分かった、俺が悪かった! 許してくれ!」


 阿鳥が深々と頭を下げる。


「ああ?」


 魅花は彼を見下ろした。


「ごめんなさいで済む話じゃねーだろ」


 乱暴な口調で言い放つ。


「あたしは退かないからな」

「か、勘弁してくれよ」

「ふざけんな! あたしはお前に孕まされて、子ども産んだんだぞ」

「そ、それは、お前がナマでいいっていうから――」

「デキた時点で責任取れよ! お前、逃げたじゃねーか!」

「俺だってこの年で父親になりたくねーよ! 安全日じゃなかったのかよ!」

「開き直ってんじゃねーよ!」


 完全に言い合いだった。


 だが、分はこちらにある。

 阿鳥に致命的なダメージを負わせるだけのものを、魅花は握っているのだから。


 阿鳥も分が悪いことを悟ったのか、


「わ、分かった! 俺が悪かった! こ、この通りだ! 頼む、許してくださいぃぃぃっ!」



 その場に這いつくばって、魅花に土下座をする。


「――ふん」


 魅花は胸がスッとするのを感じた。


 とはいえ、頭を下げたくらいで阿鳥を許すつもりはなかった。





***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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