2 新年度、俺は高校三年生になった2


「コータくんは週末デートかな? ぐふふ」

「ぐふふって」


 妙な笑い方をする春歌に苦笑する俺。


「今週末は模試もあるし、真白さんとは会えないんだ。というか、受験期間だからな……今年度は今までほど会えないと思う」

「そっか……寂しいね」

「ああ。けど、合格するまでの辛抱だ」


 そう、何よりもまず――合格しなきゃいけない。


 俺自身の人生というのはもちろんだけど、真白さんと歩む人生のためにも。


 失敗は許されない。

 順調に進んで、順調に就職して、順調に――。




 結婚、したいんだ。




 今はまだ自活もしていないけれど、卒業して必ず――。


 だから、がんばろう。


 がんばるぞ!

 と、


「燃えてるみたいね、先輩」


 北条が声をかけてきた。


「受験生だからな。合格に向けてがんばるよ」


「じゃあ、あたしは生徒会長としてがんばる」


 ニッと笑う北条。


「ま、蜜先輩ほどの能力はないけど、あたしなりにね」


 言って、北条はうつむいた。


「ん、どうした?」

「うう……やっぱり蜜先輩がいないと寂しい」


 いきなり涙目になる。


 赤羽根先輩が卒業する日、人目もはばからずに号泣していた彼女の姿を思い出した。

 あのときは赤羽根先輩も天ヶ瀬先輩も桐生もみんな泣いてたっけ。


 俺もちょっと泣いてしまった……。


「でも、今度蜜先輩の下宿先に遊びに行くことになったんだ」

「赤羽根先輩って天ヶ瀬先輩と同じ大学だよな? 下宿先も近いんだったっけ」

「そ。ルル先輩とも会うよ。へへ、楽しみ~!」


 北条は嬉しそうだった。


 時間は流れ、別れもあるけど、俺たちはこうしてつながっている――。


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