第8章
1 新年度、俺は高校三年生になった1
四月――。
新学期を迎え、俺はとうとう高校三年生だ。
「おはようございます、影咲希先輩」
「おはよう、桐生」
校門のところで桐生に会った。
赤羽根先輩や天ヶ瀬先輩が卒業した後の生徒会は、新二年生の北条が生徒会長としてがんばっている。
俺や桐生も彼女をサポートして活動していた。
で、桐生からは定期的に相談を受けていた。
……正直、大したアドバイスはできてないと思うんだけど、すっかり頼れる先輩みたいに思われてるらしい。
まあ、話を聞くくらいはできるし、俺に話すことで桐生の気持ちが楽になるなら、いいか……という気持ちだ。
「昨日、ルル先輩から電話が来たんですよ。入学から二週間くらいして、やっと落ち着いて来たって」
桐生は俺に近況を報告してきた。
「桐生は天ヶ瀬先輩と定期的に連絡をとってるんだよな?」
「もちろんです。少し距離が離れてしまったのが不安ですけど……」
天ヶ瀬先輩は都内の大学に進学したようだ。
今までみたいに学校で会うことはできないし、彼女の下宿先までは電車やバスで一時間くらいかかるらしい。
「遠距離か……」
俺も県外の大学に入った場合は、真白さんと遠距離になっちゃうな。
絶対、近場の大学に合格しなきゃ……。
決意を新たにする。
いちおう、第一志望は県内である。
と、
「やほー、コータくん」
桐生と別れると、入れ替わりのように春歌がやって来た。
「……汗だくだぞ、お前」
「家から五キロくらいランニングしてきたのっ」
「朝から元気だな……」
「日々トレーニングですぞ、君」
びしっと人差し指を立て、したり顔で語る春歌。
「ボクも次の大会で引退だからね」
「ああ、もうそんな時期なんだな」
「そ。寂しいよね……」
春歌がしみじみと語る。
「だから!」
と、いきなりテンションを上げ、
「最後の大会も必ず優勝するのっ。高校三年間無敗で終えて、ボクは伝説を作るのだ!」
「燃えてるなー、春歌」
「とーぜんっ」
春歌の目はキラキラしていた。
そうやって全力で打ちこむものがあるのは、本当にすごいと思う。
本人に面と向かって言うのは照れくさいけど……正直、尊敬してるんだ。
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