17 桐生計と天ヶ瀬ルルのクリスマスイブ1(桐生視点)


 12月24日――。


 今日はクリスマスイブである。


 土曜日ということもあり、繁華街に行くとカップルであふれていた。

 桐生は隣を歩く少女――天ヶ瀬ルルを見つめる。


 こうして一緒に歩けることが、夢のようだ。

 自分が、『彼女』と一緒にクリスマスイブを過ごせることが、本当に夢のようだ。


「ルル先輩……」


 桐生は彼女の手を握った。


「計から手をつないでくるなんて珍しいね」


 ルルが微笑む。

 桐生は緊張気味だった。


(今日こそ……ルル先輩と初めてのキス、できたらいいな)


 内心でつぶやきながら、顔全体がカーッと赤くなった。


 想像しただけで心臓がバクバクという感じで鼓動を速める。

 結局のところ、自分は踏み出すのが怖かったのだ。

 だけど、今日は……今日こそは。


 イブの雰囲気を借りて、もう一歩踏み出したい。

 勇気を持って踏み出したい――!


「? さっきから私の顔をジロジロ見てない?」

「えっ、いや、あの……あわわ」

「ちょっと挙動不審になってるよ、計」


 ルルがジト目になった。


「……そんなに怪しかったですか」

「不審人物」

「そこまで……!?」

「ま、なんとなーく、あなたが何考えてるか、想像ついたけど」


 ルルはジト目をやめ、悪戯っぽく笑った。


(うっ、なんか見透かされてる感じだ)


 やはり、この辺は恋愛の経験値の差が表れているのだろうか。


 だが、気後れしていては駄目だ――。




 終始、緊張気味でその日のデートは終盤を迎えた。


 今は繁華街から少し外れた場所にある公園内を歩いている。

 ちょうど周囲にひと気がなく、二人っきりの雰囲気に浸ることができた。


「今日は楽しかった」


 ルルが微笑んでいた。


「嬉しいです。ルル先輩がそんなに喜んでくれて」

「計は緊張してた?」

「そりゃあ……」


 はにかむ計。


「私も、ちょっと緊張してたよ」


 ルルが苦笑した。


「計と過ごす初めてのイブだからね」


 桐生は周囲にそっと視線を走らせた。

 誰もいない――。


「ん、どうしたの、計?」

「あのっ……ルル先輩……っ!」


 ひと気がないことをもう一度確認してから、桐生は一歩踏み出した。


 心臓の鼓動が一気に早まる。

 さらに、もう一歩。


 ルルの顔がすぐ近くにある――。





***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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