15 俺は魅花と再会し、自分の気持ちに決着をつける2
「魅花との別れ方は……俺からすれば最悪だった。だけど、だからってお前がどうなってもいいとは思わない」
「……ふん、いい子ぶっちゃって。そっちはいいよね。新しい彼女ができて余裕なんでしょ。あたしの方は散々だよ」
魅花はペッと地面に唾を吐いた。
こんな仕草、俺と付き合っていたときには一度も見せたことがない。
きっと気持ちが荒んでいるんだろう。
そう思って魅花を見ていると、
「な、なんだよ、その視線は! あたしを憐れむんじゃねーよ! そういうのが一番むかつくんだ!」
魅花が叫んだ。
絶叫だった。
「あんた、あたしに屈辱を与えたくて、わざと優しくしてるの!? むかつく!」
「違う! お前が心配だから言ってるんだ!」
俺は魅花を見つめた。
彼女を前にすると、裏切られたときの苦い気持ちが未だに鈍い痛みとなって胸の中を走り抜ける。
「正直……お前を恨む気持ちだってある。屈辱感だってある」
人間だからな。
「でも同時に、魅花を好きだったときの気持ちも、心の片隅には残ってるんだ」
「コータ……?」
楽しかった思い出。
一緒に笑い合った日々。
愛おしかった――想いが。
もう二度と付き合うことはないけれど、せめて。
「魅花は魅花で幸せになって欲しい……そんな気持ちだってある」
だから――心配なんだ。
「……ばか」
魅花はため息をついた。
「でも、そういうところを……あたしは好きになったんだ」
「魅花……」
「あーあ。今さらだよね……急に後悔の気持ちが出てきちゃった……」
魅花は空を見上げる。
「阿鳥なんかと付き合わなきゃよかった……あんなやつとエッチして、なんか大人になった気がして……全部間違いだった……」
その目にみるみる涙が浮かんでいく。
悲しみなのか、悔しさなのか。
俺には魅花の気持ちは分からない。
「うううう……あんたと別れなきゃよかった……あたし、馬鹿だった……うぐぐぐ」
「魅花――」
「ねえ、コータ……今からでも、やり直せないかな?」
「えっ……」
「ねえ、今の彼女と別れちゃいなよ。で、あたしと付き合おうよ。ね、お願い」
さすがに俺は言葉を失った。
俺が言いたいのは、そんなことじゃない。
現実を見据えて、未来を歩いてほしいんだ。
なのに――どうして、そんなことを言えるんだ……?
いくらなんでも都合がよすぎる。
どこまでも自分本位なんだ、魅花は。
心配する気持ちさえ、サーッと醒めていくようだった。
かつては、この女に恋をして、交際して、ずっと一緒にいたい、なんて思っていたことが嘘みたいだった。
こんな女だったのか……。
俺はゾッとするような戦慄さえ覚えていた。
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