14 俺は魅花と再会し、自分の気持ちに決着をつける1

 その日、俺は生徒会の仕事を終え、帰宅路を歩いていた。


「最近の桐生と天ヶ瀬先輩、ラブラブオーラ出しまくりだよな……」


 別に過度にいちゃついてるわけじゃないんだけど、ちょっとした行動で互いに目配せしたり、二人の世界っぽい雰囲気になったり……。


 うん、とにかく幸せオーラや好き好きオーラが出まくってるんだよな。


 羨ましい。


 いや、俺だって真白さんとラブラブだけどな。


 あんなふうに同じ高校に通って、学園生活の時間を共有できるのが――やっぱり羨ましいんだ。

 俺と真白さんには、絶対にできないことだからな。


「ま、ないものねだりしても仕方ないか……ん?」


 前方を歩いているのは、見覚えのある後ろ姿だ。


 もしかして――。

 俺は慌てて彼女を追いかける。


「……コータ」


 振り返ったのは、やっぱり魅花だった。


「あ、ごめん……つい追いかけてしまって」

「別に謝らなくてもいいけど?」


 魅花はふんと鼻を鳴らした。


 俺の視線はどうしても彼女の腹部に行ってしまう。


 ……随分と膨らんだな。

 妊娠したっていう噂は本当だったのか。


 今は何か月なんだろう?

 妊娠からどれくらい経つと、腹が今くらいに膨らむのか、よく分からない。


 でも、たぶん遠からず出産日になるんだろう、ってことくらいは想像できた。


 魅花が――母親になるのか。


 俺が人生で初めて付き合った女の子が、子どもを産む。

 不思議な気分だった。


「……何よ。ざまあみろとでも思ってるわけ?」

「えっ」

「あんたを裏切って、他の男と付き合って、結局そいつに孕まされて、しかも、そいつは全然責任取ろうとしなくて……」


 魅花が俺をにらむ。

 火を噴くような視線だった。


「さぞかし痛快でしょうね!」

「……哀れんでなんて、いない」


 俺は首を左右に振った。


「俺たち……その、色々あって別れたけど……でも、お前が大変な状況なら、やっぱり心配だよ」

「心配? あたしが?」

「当たり前だろ」

「あんたを裏切って、阿鳥とくっついたのに?」


 あのときは、辛かった。

 そして苦しかった。


 直後に真白さんと出会い、癒してもらったから、思ったよりもずっと早く立ち直れたけど――。


 もしその出会いがなかったら、どうなっていたか分からない。

 魅花に対してわだかまりや怒り、恨めしい気持ちが完全に消えたわけじゃない。


 俺の心にだってドロドロした部分や攻撃的な部分、汚い部分だってある。


 それでも、やっぱり――。

 魅花を心配する気持ちだって、存在しているんだ。



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