8 冬の始まり・進藤魅花と須山阿鳥1(魅花視点)
「あ、また動いた……かな……」
魅花は自宅のベッドに腰かけ、腹をさすりながら、ため息をついた。
今は妊娠七か月だ。
腹部はだいぶふっくらと丸みを帯び、もう外からでも妊娠していると十分に分かる体型になってしまった。
産むか、堕胎するか――その決断ができないままズルズルと一日、また一日と経過し……今に至ってしまった。
「もうこうなったら……産むしかないんだよね……」
だが、その後はどうすればいいのだろう?
「親は、助けてくれるのかなぁ……」
なかなか親に言いだせず、結局妊娠三か月を超えたあたりで思い切って打ち明けた。
両親に激怒されると予想していたが、実際にはほとんど何も言われなかった。
父親はどこか虚脱したような表情で、母親の方はショックを受けていたものの、すぐに出産するのか、堕胎するのか、確認してきた。
きっと父は半分現実逃避していたのだろう。
対して母は現実にいち早く向き合っていたのだと思う。
これからどうするのかを一緒に考えてくれた。
病院には毎回付き添ってくれるし、出産にかかわる手続きも色々と調べたり、代わりにやってくれたりしている。
当事者の魅花ですら、いまだに現実逃避気味だというのに……。
高校は……中退してしまった。
目立っていく腹を同級生に見られたくなかったのだ。
こうして、彼女の人生は大きく変わってしまった。
「くそっ、なんでこんなことになるんだよ!」
魅花は誰に言うでもなく、毒づいた。
「ああ、くそっ、イライラする……!」
何度も舌打ちしながら、魅花は立ち上がった。
外出の支度をして、玄関に向かう。
「魅花、どこに行くの?」
母が声をかけてきた。
「ん、ちょっとその辺まで。ただの散歩」
「……何かあったの?」
母が心配そうな顔をする。
「やだな、外の空気を吸いたくなっただけ」
魅花は誤魔化しつつ、家を出た。
やって来たのは阿鳥のアパートだ。
窓から明かりがわずかに漏れている。
どうやら在宅のようだった。
チャイムを押すと、ドアを開けて阿鳥が出てきた。
来訪者が誰なのかを確かめもせず、いきなりドアを開けるのは不用心だなと思ったが、そんなことはどうでもいい。
「お前、何しに来たんだよ……!?」
阿鳥がギョッとしたような顔をしていた。
「ねー、どうしたの、阿鳥くん~」
後ろから女性の声がした。
また性懲りもなく新しい彼女を作ったのだろう。
彼女が魅花をにらむ。
「何、この子? 高校生?」
「ああ、すぐに終わる。お前は向こうで待ってろ」
阿鳥は彼女を追い払い、魅花と向き合う。
「おい、俺たちはもう終わっただろ。しつこくつきまとうなよ」
「ねえ、知ってる? DNA診断って赤ちゃんが生まれる前でもできるんだって」
迷惑そうな阿鳥に魅花がニヤリと笑った。
***
〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』
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