3 冬の始まり・清白真白と天ヶ瀬みちる(真白視点)
その日の昼休み――。
真白は同僚であり友人でもある天ヶ瀬みちると会社近くの定食屋でランチ中だった。
この時間は貴重なリフレッシュタイムであり、二人は食事の傍ら歓談していた。
話題の中心はだいたい会社内の人間関係か仕事のグチになる。
今日は前者だった。
「えっ、経理の皆川さん、彼と別れたの?」
みちるの話に真白は驚いた。
彼女は真白よりも五つほど年下で、ギャル系の美人である。
明るく朗らかな性格をしていて、真白も好感を持っていた。
だから彼氏ができたと聞いたときは心から祝福したのだが――。
「うん、相手が結構なお金持ちらしくて、なんか社会的なステータスの差がきつかったとかなんとか……」
みちるがため息をついた。
「やっぱり、自分と相手が違うステージにいるのってキツいのかなぁ」
「違うステージ……」
真白はハッとなった。
社会的なステータスではないが、真白とコータも違うステージにいるともいえる。
十二歳の年齢差。
学生と社会人という違い。
「どうしたの、真白」
「ねえ、みちるちゃん……」
真白は空を見上げ、ため息をついた。
「私……このまま、彼と付き合っていていいのかな……」
「えっ」
「年齢差とか、色々と悩むところが……」
「年齢差?」
「私ね――」
苦しい。
苦しい。
誰かに、この胸の内を聞いてほしい。
そう思うと、たまらなくなった。
ずっと溜めこんでいた思いは、一度ほころぶと、あっという間に決壊してしまう。
「私……っ」
「ち、ちょっと、どうしたのよ、真白……!?」
みちるは驚いた顔をしている。
「……今日、飲みに行く?」
真白は小さくうなずいた。
コータとの交際を通じて、こんなふうに悩んだり苦しい思いを胸の内に抱えることは、何度もあった。
そのたびに、みちるに打ち明け、悩みを昇華していた。
だから彼女には感謝の気持ちしかない。
「いつもありがとう、みちるちゃん」
「水臭いこと言わないでよ。あたしたちの仲でしょ」
みちるが笑った。
「応援してるんだからね、真白」
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