2 冬の始まり・俺と赤羽根先輩

 その日の生徒会室、俺は赤羽根先輩と二人で話していた。


 ちなみに、先輩はすでに推薦で大学決まったそうで、受験勉強に追われている大多数の三年生と違って、かなり余裕があるようだ。


「えっ、魅花が学校を辞める……?」


 俺は赤羽根先輩に聞いて驚いた。


「……最近はずっと学校を休んでいたみたいで、心配はしてたんですけど……」

「噂ですけど妊娠したらしいです。見て分かるくらいに、お腹がふっくらしてるらしくて……」

「妊娠……!?」


 俺はさらに驚いた。


 だとしたら、相手はあの須山だろうか?

 それとも別の――?


 半年近く前、彼女が俺に『よりを戻そう』と言ってきたことを思い出す。

 あのとき、もう妊娠していたのかもしれないな。


 まさかエッチした後で、俺との子どもができた、なんて言うつもりだったんじゃないよな……?

 いわゆる托卵ってやつだ。


 いや、そんなふうに考えるのは、さすがに悪いか。

 あのとき――魅花はどうすればいいか分からなくなって、俺を頼ってきてくれたのかもしれない。


 だとしても、俺はどうすればよかったんだ。

 何が正解だったんだろう。


 赤羽根先輩とのこともそうだけど、結局、俺は『正しい道』を選択できないことばかりなのかな……。


 俺は――。


「――あなたが責任を感じることではないですよ」


 赤羽根先輩が言った。


「自分を手ひどく振った女でも気遣うんですか?」


 彼女の眉が少しだけ寄った。

 以前、遊園地や学校内で赤羽根先輩は魅花とやり合ったことがあるし、彼女に対してそんなにいい感情を持ってないんだろう。


「あいかわらず、優しいんですね」

「いえ、俺は……」

「結婚するということなのか、違うのか……その辺りは分かりませんし、詮索もしませんけれど」


 と、赤羽根先輩。


「どうするにせよ、彼女が選んだ道です。苦しくても、自分が進む道は――結局のところ自分で決めていくしかありませんもの」

「魅花の進む道……か」

「ええ」


 俺の言葉にうなずき、赤羽根先輩は遠い目をした。


「私だって、失恋の痛みが癒えたわけではありません。今でも思い出すと辛いときもあります……でも、前を向こうと思っています」

「赤羽根先輩……」

「影咲希くんも、ね。悲しそうな顔をしていると、彼女さんが悲しみますよ?」


 いたずらっぽく笑う赤羽根先輩に、俺はつられて微笑んだ。





***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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