13 清白真白と剣ヶ峰春歌2(真白視点)

「ねえ、コータくんって中学や高校ではどんな感じだったの?」

「えっ」

「私、彼が小学生のころは仲良かったんだけど、それからしばらく会えない期間があったから……そのころの彼、どんな感じだったのかな、って」


 真白がたずねる。


「その……彼女も、いたんだよね?」

「え、えっと……」

「あ、元カノのことはコータくんから聞いてるから。気を遣わないで」

「そ、そうですか……」


 春歌はうなずいて、


「ただ、その子……魅花ちゃんの他には特に恋愛はしてないと思いますよ。どっちかというと男同士でつるんで、遊ぶ方が楽しいってタイプで。まあ、たいがいの男の子はそうかもしれませんけど」

「ふふ、それはあるかもね。コータくんくらいの年頃だと」


 真白が微笑む。


「で、春歌ちゃんとは遊んでたの?」

「えっ」

「あ……ご、ごめん。追及しているわけじゃないの」


 初対面の相手に失礼だと分かっていても、つい聞いてしまった。

 もうすぐ三十歳だというのに、自分の気持ちを押さえられない。


「あー……もう、本当にごめんなさい」


 真白は深々と頭を下げた。


 春歌は真剣な表情でこちらを見ている。


「――本当に、好きなんですね。コータくんのこと」

「春歌ちゃん……?」

「好きだから、気になるんでしょう? ボクだって好きな男の子のことは、そうだもん」

「……春歌ちゃんにも、そういう相手がいるんだ?」

「いますよ」


 春歌がにっこり笑った。


「へえ、どんな男の子?」

「んー……真面目でちょっと不器用で、ちょっと鈍感で、一緒にいると楽しくて、癒されて、胸がドキドキして……それで……」


 言いながら、春歌の表情が曇っていく。


「友だちとしてずっと過ごしてきて、いつの間にか一人の男の子として意識するようになって……でも、向こうはそんなボクの気持ちになんて、これっぽっちも気づいてなくて……そのうちに他の女の子と付き合ったり、その子と別れても、また別の女性と付き合ったりして――きっとボクは、彼にとって『女』じゃなかったんです」

「春歌……ちゃん……?」

「だから、きっとこの恋が叶うことはなさそうです……えへへ、失恋しちゃいました」

「やっぱり、君の好きな男の子って――」


 真白はハッと気づく。

 先ほど感じたことは、間違いではなかった。


 彼女が想う相手は、やはり――。


「真白さん」


 春歌がまっすぐにこちらを見た。


「幸せに、なってくださいね」


 春歌が言った。


 笑顔はない。

 怒りや悲しみもない。


 さっきまでの朗らかさが嘘のような無表情だった。


「コータくんを、幸せにしてあげてくださいね」


 真白はごくりと息を飲み、それから小さくうなずいた。


「うん、そのつもり。私も、コータくんも、幸せになりたい」


 春歌をまっすぐに見つめ返す。


「……なってみせる」






***

〇『いじめられっ子の俺が【殺人チート】で気に入らない奴らを次々に殺していく話。』

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