11 俺と春歌と真白さんと


 真白さんが飲み物を買いに行っている間、俺は春歌と話していた。


「実は彼女との年齢は十二歳差なんだ。でも彼女……真白さんはきっとそのことを気にしているから、年齢差はスルーする感じで接してくれ」

「ん、りょーかい」


 うなずく春歌。


「できれば、同世代の友だち感覚で接してくれると嬉しい」

「りょーかいであります、隊長」

「よし頼むぞ、春歌隊員」


 俺たちは短い打ち合わせをした。


「? どうしたの、二人とも?」


 真白さんが戻って来た。


「いえ、ちょっと我が隊の方針を打ち合わせていて……」

「ですです」

「我が隊?」

「あ、真白さんも入隊しますか? 隊長はコータくんです」


 春歌が言った。


「でも、お飾り隊長で隊の権限はボクが全部握ってるって設定です」

「そんな設定なんだ……」

「隊長は給料をすぐ課金ガチャにつぎこんで毎月カツカツなので、ボクに給料を前借りしてる設定もあります」

「無駄に設定細かいな……」

 しかも俺、だめだめ人間じゃないか。

「ふふ、面白そうね」


 真白さんがクスリと笑った。


「じゃあ、決まりっ。よろしくお願いしますね、真白隊員!」

「こちらこそよろしく~」


 お、なんか打ち解けたっぽい雰囲気だぞ。


 さすが春歌、初対面の人間と仲良くなるのが異様に上手い。




「真白さん、向こうで一緒に泳ぎましょう~」


 春歌が真白さんを誘った。


「あれ、『真白隊員』じゃないの?」

「我が隊は解散しました」

「早っ!?」


『隊長と隊員ごっこ』にもう飽きたらしい。


 こいつ、熱しやすく冷めやすいタイプなんだよな……。

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