8 夏だ、水着だ、真白さんとプールへ1


 週末――。

 俺は真白さんの車に乗せてもらい、プールまでやって来た。


「はい、到着」

「運転ありがとう、真白さん」


 ありがたいんだけど、本当は俺が運転して真白さんを連れてきたかったな。

 早く免許が取れる年齢になりたい……。


「? どうかしたの、コータくん?」

「いや、えっと……真白さんの水着姿、楽しみだなって」

「っ……!」


 俺の言葉に真白さんは驚きとも恥じらいともつかない表情を浮かべた。


「や、やだな、あんまり期待しないでね……」

「いや、すごく楽しみにしてる」

「ハードル上げないでぇ……」


 真白さんが軽く悲鳴を上げる。


 そんな彼女が可愛くて仕方がない。


『赤羽根先輩との事故キス』を報告した後、彼女の態度には大きな変化はないように思う。

 許してくれた、ってことなのかな……。


 まったく気にならない、ってことはない気がする。

 それを我慢しているだけなのか、それとも……。


 どっちにしろ、俺にできるのは真白さんに楽しい思いをしてもらうことだけだ。


 二人でいっぱい笑って、楽しんで、この間のことを忘れてもらえるくらいに――。


「行こう、真白さん」


 俺は彼女の手を取った。


「うんっ」


 嬉しそうな顔で俺の手を握り返す真白さん。


 車から出ると、日差しがジリジリとしている。

 夏真っ盛りって感じだ。


 きっとプールに入ったら気持ちいいだろうな――。




 更衣室で着替えてプールサイドに出る。


 俺の方が早く出てきたみたいで、真白さんの姿はまだ見えない。

 周囲は当然、水着姿の男女がいっぱいいた。


「彼女と二人でプールなんて初めてだ……魅花とは来られなかったし」


 俺はなんだか顔がにやけてしまった。


 ちなみに魅花と付き合っていたのは、年明けから五月くらいまで。

 タイミング的にクリスマスを過ごしたり、一緒に初詣に行くこともなかった。

 当然プールも。


 でも、そういうのは全部、真白さんと一緒に過ごせるはずだ。


 むしろ、そういうことの初めてが全部、真白さんであることが嬉しい。

 当然、そこまで交際が続いていれば……だけど。


「絶対続かせるぞ。ずっとずっと……!」

「どうかしたの、コータくん?」


 声がして振り返ると、真白さんが立っていた。


 うおおおおおおおっ!


 俺は、思わず見とれてしまった。


 真白さんのビキニ水着姿は、最高だった。


 すらりとして、それでいて豊かに膨らんだ胸や尻、くびれた腰が女らしい艶めかしいラインを描いている。


 体育の授業とかで女子の水着姿を見たことはあるけど、こうして市営プールで、しかも彼女の水着姿を見るのは、全然違う感覚だった。


 喜びと高揚感が沸き上がってくる。


 こんな綺麗な人の彼氏なんだと思うと、なんだか誇らしいというか、優越感というか……とにかく最高だ。

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