4 魅花が阿鳥の浮気を知り、修羅場になる1(魅花視点)

「はあ? ちょっと待ってよ! この女、誰なの!?」


 魅花は怒声を上げた。


 いつものように阿鳥とたっぷりセックスした後、彼がトイレに行っている間に、こっそりスマホを覗き見てしまった。


 すると、他の女と遊びに行っているようなメッセージを見つけてしまったのだ。


『昨日は楽しかった』

『早くまた会いたい』

『来週までには生理が終わってるから、またいっぱいエッチしようね』


 などと肉体関係があることを思わせるメッセージまである。


「っせーな、友だちだよ、友だち」


 阿鳥は面倒くさそうに言った。


「っていうか、俺のスマホ勝手に見るんじゃねーよ!」

「うるさいっ! 友だちなわけないじゃない! 『またいっぱいエッチしようね』って何!?」

「それはほら、えっとネタだよ、ネタ。冗談で書いてるだけだって」


 阿鳥が笑う。


 軽薄そうな顔は、明らかに嘘をついていそうな表情を浮かべていた。


「あたし以外の女の子とエッチしてるんだ……」

「いや、本命はお前だって」

「……本当?」

「ほんとほんと。ほら、エッチしようぜ。な? な?」


 阿鳥に抱き寄せられ、そのまま唇を重ねる。


 彼の手が胸元をまさぐってきて、魅花は甘い声を上げ始めた。

 このまま、ごまかされようとしている気がしたが、こみ上げる快感を優先した。


「……シャワー浴びてくる」


 魅花はいったん阿鳥から離れ、バスルームに向かった。




 苛立ちながら服を脱ぎ捨てる。


 汗ばんだ肌は、まだ先ほどまでの性交の余韻で熱く火照っていた。

 その火照りを冷たいシャワーで鎮めていく。


 指先で股間を開くと、どろり……と阿鳥に注ぎこまれたものの一部が流れてきた。


 最近は当たり前のように避妊なしで彼を受け入れるようになってしまった。

 その方が気持ちいいから、と阿鳥はヘラヘラ笑いながら、彼女を抱いてくる。


 確かに気持ちがいいのだが、あまり大事にされていない気がして、魅花はずっとモヤモヤしていた。


 そして――今日の出来事である。


(あいつ、あたしのことをどう思ってるのよ……!)


 ふと思いついたことがあり、魅花はシャワーを出したまま、そっと浴室を出た。


 これなら阿鳥は、まだ彼女がシャワーを浴びていると勘違いするだろう。


 魅花は体を手早く拭き、足音を殺して廊下を進むと、リビングの扉をそっと開いた。


「魅花のこと? あいつとは遊びだって。前にも言っただろ。本命はお前だから。な、機嫌直せよ」


 電話をする阿鳥の声が聞こえてきた。





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