8 俺は真白さんの彼氏だと胸を張りたい

 週末、俺は真白さんと会っていた。


 日中は一緒に食事したり、近場を歩いたり……夜になり、俺のアパートで過ごしていた。


 その辺に寝っ転がってテレビを見たり、お菓子を食べたり、かと思えば、いきなり脈絡もなく抱き着いたり、抱き着かれたり。


 軽くキスを交わしたり、体に触れたり、また駄弁ったり。


 そんなまったりした時間を過ごしている。


「で、同僚のみちるちゃんに鬼追及されちゃって。私が彼氏いない歴イコール年齢だと思ってたからね、みちるちゃん」


 今は、今週の平日に真白さんが同僚と交わした会話のことが、俺たちの話題だった。


「彼氏がいる、って言っちゃった……あ、でもコータくんのことを具体的には話してないんだけどね」


 真白さんが照れたように笑った。


「さすがに一回り下の高校生と付き合ってる、なんて言えないよ」

「そっか、言えないんだ……」

「えっ」

「俺って、他人に言えないような彼氏なんだ」


 あ、しまった。

 これじゃ完全に拗ねてるみたいだ。


「あ、ごめん。そんなつもりじゃなかった……あの」


 言いながら、だんだん『しくじった』という思いが強まってくる。


 これは――失言だ。

 まずい、謝らないと……。


「そうだよね。コータくんに失礼だったね」


 だけど、謝ったのは真白さんの方だった。


「ごめんなさい」

「い、いや、違う。失言したのは俺だよ」

「ううん。私の方」


 真白さんは譲らない。

 それが、俺の罪悪感を余計に募らせた。


「じ、じゃあ、お詫びにエッチなことしてよ。それでチャラってことで」

「えっ?」

「あ……」


 あーもう、今日の俺は何言ってるんだ!

 テンパって失言から失言につなげてしまった。


「うおおお、しっかりしろ俺」


 思わず頭を抱え、床をゴロゴロ転がってしまう。

 それを見た真白さんがクスクスと笑った。


「もう、コータくんって本当にエッチだよね」


 言いながら、真白さんは少し嬉しそうに見えた。


 真白さんこそエッチだよな……。

 内心で思ったが、今度は口に出さない。


 これ以上の失言は避けなくては。


「じゃあ、二人でいやらしいことしよっか?」


 誘ってくる真白さんの顔は、すでに清楚系から肉食系へと変化していた――。





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