3 赤羽根先輩VS魅花、ふたたび


 ……というか、魅花が俺に用ってなんだろう?


 俺たち、もう付き合ってないわけだし、基本的に用事なんてないはずだ。


 まさか、ヨリを戻したい、なんて話があるわけないしな。


 まあ、あっても当然断るんだけど。


 俺には真白さんがいるからな。


 大切な大切な真白さんがいるから――。


「私が先に影咲希くんに用件を切り出したんです。それが終わってから声をかけるのが礼儀ではありませんか?」

「あたしの方が緊急だもん。だから、あたし優先」

「駄々っ子ですか、あなたは」

「だって、あたしはコータの元カノだよ? あんたは何?」

「わ、私は……っ」


 赤羽根先輩が動揺したみたいだった。


「私は、だから、その、影咲希くんと、いちおう………………キ……………………ス……………………した仲ですし、あのその……」

「えっ? えっ?」


 赤羽根先輩の声は聞き取れないくらい小さくて、魅花には通じなかったらしい。


「だから……キ………………………ス………………………………」

「えっ? えっ? えっ?」


 ますます赤羽根先輩の声が小さくなり、戸惑った様子の魅花。


「もうっ、何が言いたいのよ、あんたはっ」

「うううう、言えないぃぃぃぃ……」


 それっきり黙ってしまった。


 ……たぶん事故キスの記憶がよみがえっちゃったんだろうけど。

 それにしても動揺しすぎじゃないか?


 やっぱり赤羽根先輩らしくないな。


 どこか上の空というか、とにかく様子がおかしい赤羽根先輩に、魅花が攻めこんでいく。


「何? 言い返せないのぉ?」

「私は……」


 赤羽根先輩が口ごもった。


「だっせー奴! エッチもしたことがないお子様は引っこんでてよね! コータはあたしの大人の魅力で――」

「魅花、やめるんだ」


 俺は静かに彼女を諭した。


「……っていうか、どう見ても、赤羽根先輩の方が大人っぽく見えるんだけど」


 とりあえず、俺が場を収めるしかない――。




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