2 蜜の異変


「ふう……」


 赤羽根先輩がため息をつく。


「これで落ち着いて話せますね」


 そう言われて、さすがにちょっと引っかかるものを覚えた。


 これじゃ、春歌が邪魔だから追い払ったような形だ。

 あいつだって内心いい気はしなかっただろうに、波を立てないために、何事もないように振る舞って席を外してくれたんだ。

 それを――、


「さっきの態度はよくないですよ」


 俺は思わず注意してしまった。


 言ってから、やっぱり偉そうかな、と自戒する。


「あ、いえ、すみません……ただ、春歌が傷ついたかもしれない、と思って」


 シン、と沈黙が流れる。


 赤羽根先輩は一瞬、無表情になった。


 しまった、やっぱり言い方がよくなかったか。


 と思ったら、次の瞬間には申し訳なさそうな表情になり、


「……そうですね。今のは私が悪いです」


 赤羽根先輩が頭を下げた。


「春歌さんにも、それに影咲希くんにも気を遣わせたり、不快にさせてしまって……ごめんなさい」

「いえ、俺は――」

「後で春歌さんに謝ります。私、こんなに余裕がなくなるの、初めてかもしれません」


 赤羽根先輩はため息をついた。


「余裕がない?」

「あなたと一緒にいると、気持ちに余裕がなくなるんです。ドキドキして……頭が真っ白になって、何も考えられなくなる――」

「赤羽根先輩……?」


 彼女が俺に近づく。


 どこか、目の焦点が合っていないような感じだった。


 迷っている?

 動揺している?

 あるいは緊張している?


 いつも凛として、毅然としている赤羽根先輩らしくない。

 この人、こんな表情もするのか――。

 と、


「コータ、ちょっといい?」


 今度は魅花だった。


 俺と赤羽根先輩の間に割って入るように、やって来る。


「なんですか、あなたは?」


 赤羽根先輩の表情が一気に険しくなった。

 魅花もそれに対抗するように、彼女をにらみ、


「あたしはコータに用があるの」

「私も影咲希くんに用があるんです」


 ピリピリとした雰囲気に一変する。


 あ、あれ?

 これって遊園地での対決以来の第二ラウンド……?






※予約日時を1日間違える痛恨のミス……更新時間がズレてしまいました。すみません(´Д⊂ヽ

***

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