第5章

1 波乱の週明け

「おっはよー、コータくん」

「おはよう、春歌」


 週明けに登校すると春歌に出会った。

 先週は色々あって精神的に疲れたから、こいつと会うとホッとするな。


「ん、どしたの? ニヤニヤしちゃって」

「えっ、俺そんな顔してる?」

「うん、ボクを見て、にこって。あ、もしかして超天才剣道少女にしてウルトラ超絶美少女のボクに朝からあえて嬉しい? ねえ嬉しい?」

「ウルトラ超絶美少女って」


 確か、この前は『天才高校生超絶美少女剣士』とか自称してたよな。

 こいつ、毎週自己評価が上がってないか……?


「来週にはウルトラスーパー超絶美少女にランクアップする予定だよ」


 まだ上がるのかよ、自己評価。


「ウルトラもスーパーも超絶も似たような意味じゃないか?」


 俺はいちおうツッコんでおいた。


「えっ、そうなの!?」


 春歌は驚いた顔だ。


「じゃあ、ウルトラグレート超絶美少女にしようかな……」

「それも似たような意味になりそうな……」

「じゃあじゃあ、ちょっと変えてウルトラバーニング爆散美少女は?」

「爆散って、爆発して砕け散ってるってことじゃないか?」

「じゃあじゃあじゃあ、ギャラクティカダイナマイト最上級美少女でどうだ!」

「うん、いいんじゃないかな」


 だんだん相槌がめんどくさくなってきた。


「あ、ちょっと投げやりな返答!」


 春歌が抗議した。

 こいつ、意外とリアクションに対して注文つけてくるんだよな。

 と、そこへ、


「ごきげんよう、影咲希くん、春歌さん」


 今度は赤羽根先輩が歩いてきた。


 黒髪ポニテ美少女に赤髪ロングヘア美少女――二人そろうと圧巻だ。


「おはようございます」

「おっはよー、蜜さん」


 俺と春歌が赤羽根先輩に挨拶を返す。


 赤羽根先輩は、妙に険しい表情だった。

 パッと見で機嫌が悪いのかと思ったけど、違う。


 なんというか――張り詰めている感じだ。

 全身から強烈な威圧感を受けるというか……いつもの彼女じゃない。


 と、赤羽根先輩が春歌に視線を向けた。

 まるでにらみつけるように。


「申し訳ありませんが、春歌さんは少し外していただけますか? 私、影咲希くんと二人で話したいんです」

「えっ」


 春歌はキョトンとした。


「深刻そうな雰囲気だね……何かあったの?」

「外していただけますか」


 赤羽根先輩の表情が硬い。


「あ……うん、ごめん」


 いつも気楽な春歌だけど、けっこう他人の気持ちを察するタイプだ。


 彼女は俺たちに会釈して去っていった。



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