3 彼に会えない間、想いは募る(真白視点)
週明けの、夜。
「はあ……」
仕事を終えて帰宅した真白は深いため息をついた。
週末、彼と会う約束をした。
まだ六日もあるのが待ち遠しい。
同時に、一日一日が週末のカウントダウンだと思うと、楽しかった。
毎日が――輝いて感じる。
これが恋をするということか。
アラサーにして初めて味わう甘い日々……。
できれば、もう少し若い時代にもこういう時間を味わいたかった。
そんな後悔もないわけではない。
ただ、今は……素直に『今』を楽しみたい。
幸せに浸りたい。
コータとの未来がどうなるのかは分からない。
単純に考えて、十二歳の年の差は簡単なことではない。
あと何年か経ったら、コータはあっさり他の女に乗り換えるかもしれない。
そんな未来も覚悟しておかなくてはならない。
覚悟したうえで――彼の告白を受け入れたのだ。
「週末だけじゃなくて、平日で仕事が早く終わったときも会いたいな……でも、私からあんまりグイグイ行ったら引かれるよね」
やはり自分は『結婚』というものを意識してしまう年齢だ。
対するコータはまだ学生。
『結婚したくて焦っている女』だと思われたら、彼の心証が悪くなる――そんな不安感がつきまとう。
彼が自分と気軽に付き合えるような雰囲気を保たなければならない。
彼に引かれて、気持ちが離れて、そのまま関係事態が消滅する……という未来をたどるのだけは嫌だった。
「コータくんと、もっと一緒にいたいなぁ……」
真白は枕をぎゅっと抱きしめた。
彼とベッドで抱き合い、何度となく交わった記憶がよみがえる。
温かな肌、たくましい体。
もちろん性欲の解消という側面はあるが、それ以上に気持ちが癒されていく感覚が心地よくて――何度も彼に抱かれた。
これからも、何度でも抱いてほしいと思った。
「……なんて、がっつかないからね。私。だから、これからも一緒にいてよ、コータくん……」
虚空に向かって語り掛ける。
近づきすぎず、離れすぎず、まずは今の距離感を大切にしよう。
未来はどうなるか分からない。
どうなっていくか、分からない。
「でも、今だけは……うん、今だけは、私は」
年下の可愛らしい親戚の男の子と。
今はたくましく成長した愛しい少年と。
恋人同士、なのだから――。
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