第4章

1 週明け、赤羽根先輩と

 遊園地で遊んだ翌日――。


 月曜日になり、俺はいつも通りに赤羽根学園に登校した。


 ちなみに学園の名前が赤羽根先輩の名字と一緒だけど、理由は知らない。

 赤羽根先輩ってお嬢様っぽい話し方をしてるんだけど、実際は一般的な家庭の娘さんなんだよな、確か。


 もしかしたら親族がお金持ちで、この学園を経営しているのかもしれない。

 機会があったら聞いてみよう。


 ……なんてことを考えながら校舎に入ると、その赤羽根先輩と会った。


「おはようございます、影咲希くん」

「おはようございます。赤羽根先輩」


 俺たちは挨拶を交わした。


 周囲の生徒たちからジロジロ見られてる気がする。


 外国の血が入っている真紅のロングヘアにアイドル顔負けの美貌。

 ただでさえ注目度の高い彼女と一緒にいるため、俺まで注目されている感じだ。

 と、


「よかった、今朝も影咲希くんと会えて……」


 赤羽根先輩がはにかんだ笑みを浮かべる。

 なんだか妙に視線に熱がこもっているような……?


「影咲希くん、ご機嫌ですね」

「えっ」

「嬉しそうに笑ってます」


 赤羽根先輩が俺をジッと見つめる。


 顔が近づいてきて、思わず息を止めた。

 なんだか、いい香りがする。


 もちろん恋とかじゃないんだけど、やっぱりドキッとしてしまうな……。


「俺……笑ってました?」


 軽く驚くと赤羽根先輩は小さくうなずいた。


 そっか……真白さんと週末に会えるから、自然と笑顔になってるんだな、きっと。

 自分では分からなかった。


「もしかして、私と会えたから喜んでるとか……もしかしたらもしかして、脈ありかも……ふふふ」


 一緒に歩きながら、赤羽根先輩が何事かをつぶやいている。


 ん、どうしたんだろう……?


 赤羽根先輩、まるで俺のことを――。


 いや、そんなわけないよな。

 いくらなんでも、この完璧超人の赤羽根先輩が俺に惚れるなんて、あり得ないだろ。


「私、この先なので……」


 赤羽根先輩が足を止めた。

 三年の彼女は一階、俺は三階の教室である。


「じゃあ、また生徒会で」

「ええ、また放課後に……」


 言いながら、赤羽根先輩はなかなか行こうとしない。


「どうかしました?」

「あ、いえ、もうちょっと影咲希くんと話したくて……い、いえ、すみません、いつまでもこうしてたら駄目ですよ。わ、私、行きますね。ごきげんよう」


 照れたように頬を赤くしながら、彼女は去っていった。

 と、


「おっはよ~、コータくん」


 それと入れ替わるように、黒髪ポニテの美少女がやって来る。


 春歌だ。


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