23 お開き


「今日は楽しかった~」


 北条は満面の笑顔だった。


「ね、蜜さん」

「ええ、いっぱいアトラクションを回れましたね」

「蜜さんって意外と絶叫マシーン好きですよね」

「霧子ちゃんは絶叫マシーンが意外と苦手なんですね」

「うう、実はそうなんです……でも蜜さんと一緒だったから。えへへ」


 はにかんだ笑みを浮かべる北条。

 本当に赤羽根先輩を慕ってるんだな。


 そうやって遊園地を満喫したメンバーたちの一方で、


「うう、あんまり天ヶ瀬先輩と話せなかった……」


 桐生は落ちこんでいた。


「せっかくのチャンスだったのに活かせなかった……」

「桐生、元気出せよ」

「なんの成果も! 上げられませんでした!」


 俺に向かって涙目の桐生。


 まあ、好きな女の子相手にアプローチのチャンスをふいにしてしまったんだし、落ちこむ気持ちは分かるかな……。


「大丈夫、桐生? 飴ちゃん食べる?」


 大阪のおばちゃんネタみたいなことをする天ヶ瀬先輩。

 ポーチから取り出した飴玉を、桐生は涙目のままで受け取った。


「ううう……」

「おいしい?」

「涙の味がします」

「ほら、泣かない泣かない」


 天ヶ瀬先輩が桐生の頭を撫でていた。


「桐生って面白いね。今日は楽しかった」


 それから、微笑む天ヶ瀬先輩。


 おお、意外と脈ありか!


 俺は思わず二人を交互に見つめた。


「ふふ、これは遊園地デートを企画してよかったかもね」


 北条が俺にささやく。


「ああ、二人が上手くいくといいな」

「だね」

「あら、影咲希くんと霧子ちゃんも少し距離が縮まりましたね。仲良くなってくれてよかったです」


 赤羽根先輩が嬉しそうだ。


「あ、あたしは別にこんな奴のこと――か、勘違いしないでよねっ。友だちなんかじゃないんだからっ」


 頬を赤らめて北条が叫んだ。


 ……典型的なツンデレ台詞だな。




 そして、その帰り道。


 方向が一緒だったため、俺は赤羽根先輩と二人っきりになった。


 周囲はすでに薄暗くなっている――。

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