22 未練があるのはどっち? 2(魅花視点)


「コータ……まさか、新しい彼女ができたっていうの……?」


 魅花の頭の中で先ほどの光景がぐるぐると回っていた。


 真紅の髪の美しい少女――。

 生徒会長の赤羽根蜜。


 魅花もその名前は知っている。

 校内でも有名人だ。


 正直、ひそかに憧れていた。


 美しくて成績優秀、おまけに生徒会長。

 あんなふうになりたいとさえ思う。


 そんな憧れの女性が、まさかコータと付き合っているとは。

 しかも、自分と別れてすぐに。


「もしかして、前からコータのことを狙ってた……?」


 コータもコータだ、自分に対する未練はないのだろうか。

 自分との関係を引きずることなく、すぐに次の恋に行ったというのか。


 魅花は自分のことを棚に上げ、激しい怒りを覚えた。


(そんなの駄目。認めない。許さない……!)


『あなたが言う『大人』になるために、私もコータくんと性体験でも積もうかしら? 一度でも性行為をすれば『大人』なんですよね、あなたの考えによると……ふふふ』


 蜜の言葉が脳裏によみがえる。


 あれは単なる挑発だったのだろうか?

 それとも、本当に……?


「駄目っ!」


 裸のコータと蜜がベッドの上で絡み合っている姿が浮かび、魅花は思わず叫んでいた。


「うおっ、びっくりした!?」


 隣でスマホをいじりながら歩いていた阿鳥が驚いた顔で振り返る。


「驚かせるなよ。操作ミスったじゃねーか!」


 またスマホゲームに興じていたらしい。


「……絶対駄目。そんなことするなら、罰を与えるからね……」


 魅花は彼氏の抗議を無視して、暗い顔でつぶやいた。


「どうしたんだよ、魅花?」

「後で、ホテルにいこ」


 魅花は阿鳥を見つめた。


「ナマでたっぷりヤらせてあげるから。特別に中出しさせてあげる」

「お、いいのか?」

「その代わり、思いっきり激しくしてね」


 そう、これは『罰』だ

 コータが他の女になびいた罰として、自分は阿鳥に抱かれるのだ。

 体の奥の奥まで、彼の欲望で塗りつぶされるのだ。


 魅花の頭の中で、感情と理屈が錯綜していた。


 自分でも何に怒っていて、何を罰したいのか、よく分からなくなっていた――。


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