21 元カレと、彼氏候補と
一方の須山は自分の彼女である魅花を助けるでもなく、スマホを見ている。
ポチポチと操作しているのは、ネットでも見ているのか、あるいはゲームで遊んでいるのか。
どちらにせよ、魅花を大切にしているようには見えなかった。
「……ん?」
と、その須山が突然顔を上げた。
俺たちの方を見て、ハッとなる。
ようやく魅花を助ける気になったのか?
――と思ったら。
「あれ? やっぱりだ! お前、ルルじゃねーか」
天ヶ瀬先輩を見てニヤリとした。
「久しぶりだなぁ」
「……知り合いですか?」
桐生が表情をこわばらせる。
天ヶ瀬先輩を守るように、彼女の前に出た。
「元カレ……ふう、もう会いたくなかったのに」
天ヶ瀬先輩はため息交じりに言った。
確か、以前に付き合っていた彼氏と別れたって言ってたな。
その人がクズ彼氏だったとも。
まさか須山のことだったとは……。
「つれねーなぁ。『初めての男』を相手に、その態度はねーんじゃねぇの?」
「っ……!」
桐生の表情がさらにこわばった。
……まあ、片思いの女性の初体験相手が目の前にいたら、穏やかではいられないよな。
「全部終わったことでしょ」
対して、天ヶ瀬先輩は平然としている。
「過去のことを勲章みたいに持ち出すのは格好悪いと思う。そういうところ、変わってないのね……ふう」
いつもの低血圧風のため息だ。
「……お前もそういうドライなところは変わってねーな」
須山が小さく舌打ちした。
と、
「ほら、阿鳥さん! もう行こ! こんな連中にかかわっても時間の無駄よ! あたしたちはあたしたちで楽しもうよ!」
「待てよ、まだ『エルシド』の途中で――」
『エルシド』というのは、確か人気のRPGスマホゲーだ。
「こんなときまでゲーム?」
「今チーム戦に時期だし、うおおおおっ!?」
「さっさと行こ!」
魅花が彼を引きずるようにして、去っていった。
「……どうして、あんな人に影咲希くんが……」
その姿を見ながら、赤羽根先輩がつぶやく。
「えっ」
「私だったら、もっと彼のために……」
「えっ? えっ?」
「あ、いえ、なんでもありませんわ」
赤羽根先輩はなぜか赤い顔で両手を振ったのだった。
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