19 赤羽根先輩VS魅花
魅花の新しい彼氏になった大学生だ。
詳しいことは知らないけど、どうやら魅花とは体の関係までありそうな雰囲気だった。
俺にとっては忌まわしい相手だった。
何せ人生初めての彼女を寝取った男なのだから――。
とはいえ、それは吹っ切れつつある。
その大半は真白さんのおかげだった。
「な、何、その人って……まさか、生徒会長……!?」
魅花が挨拶もせずに驚きの言葉を上げた。
さすがに赤羽根先輩は学内の有名人だ。
魅花も知っているんだろう。
「そちらもデートですか? お邪魔をしてはいけないので、私たちはお暇しましょうか?」
赤羽根先輩が含み笑いをして、俺の腕に自分の腕を絡めてくる。
頭のいい彼女のことだ、一瞬でどういう状況かを悟ったのかもしれない。
そのうえで、俺の恋人であるかのような振る舞いをしてくれてるんだろうか。
「私たちのことはお気になさらず。ね、コータくん?」
「あ、赤羽根せんぱ」
「蜜、でしょ」
『赤羽根先輩』と呼びそうになったところで、彼女の指先が俺の唇に押し当てられた。
「み、蜜……先輩」
「『先輩』もちょっとよそよそしいです」
「じゃあ、蜜さん」
「蜜でいいですよ」
「呼び捨てはさすがにちょっと……」
というか、『蜜さん』の時点でちょっと気恥ずかしいな。
まあ、昔は蜜ちゃんって呼んでいたわけだが……。
もう、赤羽根先輩って呼び方に慣れてしまってるからな。
――心の中では、引き続き『赤羽根先輩』と呼ぼう。
「う、嘘……その人と付き合ってるの、コータ……?」
魅花が呆然とした表情になった。
「おい、何やってるんだよ、魅花。そんな奴どうでもいいだろ」
須山が苛立ったように魅花の手を引く。
「ち、ちょっと待っててよ。もうっ」
彼女はそれを振りほどいた。
「お前……」
須山は驚いた様子だ。
「……ちっ」
舌打ちして後ろに下がる。
魅花はそんな彼氏には見向きもせず、俺をにらんでいた。
「ねえ、答えて。その人はコータの新しい彼女? あたしのこと、もう吹っ切れたんだ? 前に『未練がない』って言ってたの、強がりじゃなかったの? も、もしかしてエッチしちゃったとか?」
めちゃくちゃ早口でまくしたててくる。
明らかに動揺している様子だった。
「往来で破廉恥な質問ばかり……本当に失礼な人ですね」
赤羽根先輩がぴしゃりと言った。
魅花に見せつけるように、ますます強く俺の腕に自分の腕を絡める。
豊かな胸が二の腕に押し付けられてドキッとした。
……赤羽根先輩、けっこう胸あるな。
ついそんなことを考えてしまう。
「私にも人並みの貞操観念はありますので。軽々しく股を開くような真似はいたしません。たとえ、大好きなコータくんが相手でも」
「……何、それ。軽々しく股を開くって言い方、めちゃくちゃムカつくんだけど……!」
魅花が怒ったように詰め寄ってきた。
なんだか、完全に修羅場の雰囲気――。
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