13 俺と真白さんの想い

「ん……」


 真白さんがゆっくりと目を覚ます。


「おはよう、真白さん」

「や、やだ、寝顔――見てた!?」


 慌てたような顔をする真白さん。


「ご、ごめん。綺麗だな、って思って」

「もう……」


 照れたような顔をする真白さんが可愛い。


「でも、寝顔とかあんまり見ないでね」

「う、うん、気を付けるよ。ごめん」

「あ、別に怒ったわけじゃないのよ。私こそごめん」


 言って、真白さんがベッドを降りる。


 あ、裸だ。


「――って、きゃあっ!?」


 驚いたような顔をして、真白さんが胸元と股間を手で隠した。


「服着ずに寝ちゃったんだ、私……ああ、もう。コータくん、見た?」

「うん、ばっちり」

「あああああ、恥ずかしいぃぃぃ」

「でも、昨日の夜に全部見たよ」

「それとこれは別っ」


 俺のツッコミに真白さんは力説した。


「はい、さっき見たのは忘れて」

「うーん……忘れるのはもったいないよ。その……綺麗すぎて」

「や、やだな、もう……」


 真白さんは照れたように、はにかんだ笑みを浮かべた。


 俺はそっと彼女の頬に手を触れる。

 そのまま引き寄せると、真白さんは軽く唇を突き出した。


 柔らかな唇にそっと触れる。


 ――だけでは済まず、すぐに濃厚なキスへと移行した。


「んん、ちゅ……」


 キスを交わしているうちに、お互いにすっかりスイッチが入ってしまう。

 前もこんなことがあったな、と思いつつ、俺たちは朝早くから男女の行為にいそしむのだった。




「えへへ、コータくんといると、すぐに求め合っちゃうね」


 終わった後、真白さんが恥ずかしそうに言った。


「真白さんと触れ合いたくて、つい」

「私も、だよ。こうしてると幸せ」

「俺も」


 言いながら、俺たちはまたキスを交わす。

 さっきからずっとこんな感じだ。


 会話の合間に、ちゅっ、ちゅっ、と唇を触れ合わせ、抱き合い、またしばらく話しては、キスをする。


 ずっとこんな時間が続けばいいのに――。

 陶酔感とともに、俺はそう願った。


 そうだ、もう一度言ってしまうか。


 俺は真白さんが好きだ、って。


 昨夜、告白したときはちゃんと答えをもらえなかった。

 はぐらかされた格好だった。


 きっと真白さんは遠慮しているんだろう。

 自分の方がずっと年上だから。


 でも、そんなの気にしないでほしい。

 俺だって真白さんのことを――。


「ねえ、真白さん。俺」

「昨日は酔ってたから」


 決心して告白しようとしたところで、真白さんの言葉がかぶさった。


「私が言ったことは……忘れて」

「えっ」


 出鼻をくじかれ、フリーズする俺。


「今まで通りの関係でいましょう」


 曖昧なままで、ってことか?


「でも、俺は」

「お願い」


 真白さんが俺を見つめる。

 揺らぐ瞳に、かすかに涙が浮かんでいるように思えたのは、俺の錯覚だろうか?


「だって、やっぱり年の差が大きいから……」

「そんな、俺は……!」

「関係が壊れるより……現状維持の方がいいな、私」


 真白さんの瞳から、涙が一筋こぼれた――。

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