10 告白


 俺たちは静かに唇を合わせた。


 柔らかい。

 そして、驚くほど熱い――。


 いや、熱いのは俺自身の唇が熱を持っているんだろうか?


 真白さんとのキスは甘くて、蕩けそうで……そして、唇が燃え上がりそうなほどの熱さを併せ持っていた。


「ん、ちゅ……ぅぅ……っ」


 真白さんの方から積極的に舌を入れ、俺の舌に絡ませてくる。

 濃厚なディープキスだった。


「ふうっ……」


 長いキスを終えて唇を離すと、俺たちは同時に息をついた。


 すぐ目の前にいる真白さんを見ていると、気持ちが抑えきれなくなる。


「俺……俺も、真白さんが」


 言っていいのか。

 言うべきじゃないのか。


 ああ、もう判断がつかない。


 ただ――想いを伝えたい。


「好き、なんだ」


 真白さんが息を飲むのが分かった。


 とうとう告白してしまった。


 高揚感と不安感が同時に襲ってくる。


 真白さんはどんな反応を返してくれるんだろう。


 さっき、自分が一方的に好きだ、って言ってたんだから、応じてくれるだろうか。


『じゃあ、両想いだね』


 と――。


『好きなだけじゃ、どうしようもないことってあるでしょ……年の差分かってるの?』


 現実はこうなのかもしれない。


 どっちだ……?


 どっちなんだ――。


「コータくんのキス、上手だね……」


 真白さんの答えは、どちらでもなかった。


「えっ……?」

「今は、いいでしょう? 私はコータくんと触れ合いたい。もっと……その、えっちなことがしたいな……?」


 真白さんの目が潤んでいる。

 半開きになった唇からもれる息は、さっきまでよりも荒くなっていた。


「ねえ、もっと色々なこと……しよ?」

「真白さん……」


 俺は戸惑いを強くする。


 これって、どういうことなんだ?


『私たちの関係って……未来があるのかな?』


 そんなふうにつぶやいたくせに、いざ俺が気持ちを伝えたら、はぐらかされてしまっている。


 本当は真白さんの中で、すでに答えは出ていて。


 セフレでいましょう、っていう答えを遠回しに告げているのか?


 それとも――。


「体が疼いてきちゃった……えへ」


 照れ笑いを浮かべながら、妖しく濡れた瞳が俺を見つめている。


 真白さんが、エッチな気分になっている――?

 視線が、息遣いが、肌の火照りが……彼女の欲情を示している気がした。


 心臓の鼓動が一気に高鳴る。

 俺自身の興奮も段違いに上がっていく。


 ……答えをすぐにもらえないなら、彼女の希望通りに抱けばいいのか。


 下腹部はすでに痛いほどに張り詰めていた。

 欲望が爆発してしまいそうなほどに――。


 魅花との交際では体験できなかった、生々しい欲情を伴った関係。

 生々しい欲情を……互いの肉体で解消する関係だ。


 部屋の暗さに目が慣れてきて、真白さんの姿がよく見えるようになる。

 形の良い胸の膨らみや腰のくびれ、丸みが扇情的で、俺はもうこれ以上理性を保てなかった。


「真白さん……っ!」

「コータくん……っ!」


 もう一度、貪るようなキスを交わす。


 その後、俺は真白さんとベッドで睦み合った。


 柔らかくて、温かくて、しなやかで――。

 そんな彼女の体を存分に味わい、貪った。


 真白さんへの気持ちとか、将来とか、そういうモヤモヤとしたものを吹っ切りたくて、俺はがむしゃらに動いた。

 思いのすべてを叩きつけるように、彼女を抱いた。


 ゴム越しに三度、真白さんの中に欲望を吐き出して――それから眠りについた。

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