9 アラサー清楚お姉さんと将来について語る

 ――コータくん、本当は迷惑してない?


 その言葉に、俺は一瞬息を飲んだ。


「真白……さん……?」


 どういう意味だろう?

 どういう意図だろう?

 彼女は俺にどんな返答を期待している?

 この場合の最適解はなんだ?


 いろんな思考がぐちゃぐちゃに入り乱れる。


 ここで即座に答えを返せるほど、俺は恋愛経験値を積んでいなかった。


「私たちの関係って……未来があるのかな?」


 それは、あまりにもストレートな問いかけだった。


「えっ? えっ?」


 俺は度肝を抜かれて、完全に泡食ってしまう。

 それを見て、真白さんはハッとした顔になった。


「あ、ううん。なんでもないのっ。その……コータくんが、私とエッチしたくなったら……いつでも言ってね? 私でよければ相手をさせてもらうから」

「真白さん……?」


 その言い方――。

 やっぱり、俺たちの関係ってただのセフレなんだろうか?


 恋愛感情は……ないのか?


「俺は」

「今は、きっと私が一方的に……好きなだけだから」


 すごく、寂しげな表情だった。


「真白……さん……!?」

「コータくんは『体だけ』でいいのよ。だって、私なんてコータくんから見たらオバサンもいいところでしょ?」

「俺は……そんな……」


 くそ、上手く言葉が出ない。

 もどかしい。


 でも、なんて言えばいいのか分からない。


 俺も好きだよ、って。

 そう言えばいいのか?


 いや、軽々しく言っていい言葉じゃない。

 その場のノリで俺が調子を合わせただけ――真白さんにそう受け取られるのは絶対に嫌だ。


「……しよ?」


 真白さんが俺を上目遣いに見上げる。


 下半身が即座に反応した。

 やっぱり魅力的すぎる――。




 俺は引き出しからコンドームを取ってきた。

 ……いつ真白さんが来てもいいように、常備するようになったのだ。


 お互いにシャワーを浴び、ベッドで向かい合う。

 部屋の電気は消してあり、カーテンの隙間からわずかな明かりが入ってきて、部屋を薄暗く照らしていた。


「緊張してる、コータくん?」


 真白さんが俺に向かって手を伸ばす。


「大丈夫よ。お姉さんが教えてあげる」


 指先が俺の頬をそっと撫でた。


 ゾクリとする。


「ま、真白さん……!?」

「えへへ、一度言ってみたかったの、このセリフ――」


 いたずらっぽく笑った彼女は、次の瞬間いきなり俺を押し倒してきた。


 すぐ真上に真白さんの美しい顔があった。

 お互いに息がかかるほどの距離だ。


 俺たちの顔がゆっくりと近づいていく――。

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