8 アラサー清楚お姉さんが酔っ払って来襲する

 その日の夜、俺は自室で一息ついていた。


「今日は生徒会の人たちと話せて楽しかったな……」


 まあ、ちょっと癖が強めな人たちではあるけど。


 そして、なし崩し的に週末にみんなで遊園地に行くことになってしまった。

 あまり交友関係が広くない俺にとっては、割と一大イベントに近い感じだ。


 部活もやってないし、普段の週末はぼっちで過ごすことが多いからな。

 たまに春歌に誘われて、出かけることもあるけど……あいつはあいつで剣道部が忙しいし。


 ぴんぽーん。


 突然、チャイムが鳴った。


「……こんな時間に誰だ?」


 すでに九時近くである。

 ドアの覗き穴から見ると、そこには黒髪ストレート清楚美人の姿。


 真白さんだ。


 特に連絡はなかったんだけど、突然の訪問だった。

 なんだか胸がどきどきしてくる。


 俺は急いでドアを開けた。


「えへへ、突然来ちゃってごめんね~」


 ふうっ、と息をついた真白さんから、強烈なアルコール臭がする。


「さっきまで、るみなちゃんと二人で飲んでたの」


 るみなちゃんというのは会社の人だろうか、それとも他の友人だろうか。


「で、解散して、家に帰ろうかなって思ったんだけど」


 言いながら、真白さんが俺にしなだれかかってきた。


 俺は慌てて抱きとめる。

 正面から抱き合うような格好になった。


 ……ちょっと照れるけど、嬉しい。


「急にコータくんの顔が見たくなって」


 真白さんの頬は赤く上気していた。


「来ちゃった。えへ」


 明らかに酔っている……。


「えっと……あがって、真白さん」


 俺は彼女からいったん体を離すと、家の中に招き入れた。


「ふわぁ~、体に力が入らない……コータくん、支えてよ~」

「はいはい」


 俺は苦笑しつつ、彼女に肩を貸す。

 むぎゅっ、と胸が押し付けられていた。


 ……正直、ちょっとムラッとしてしまった。


 い、いや、とにかく真白さんをリビングまで連れていこう。




 俺たちはリビングへと移動した。

 真白さんはソファの背もたれに、ぐだーっという感じで座っている。


 あのスカートの裾がまくれて、太ももがめちゃくちゃ見えてるんだけど……。

 色っぽくてドキドキしてくる。


 そして、ますますムラッと……あ、いやいや。


「ごめんね、ここのところ仕事が忙しくて、久々にるみなちゃんと飲んだから、つい嬉しくて……飲みすぎちゃったかも~」

「だよね……」

「ふふ、コータくんは未成年だもんね。これは大人の特権。もう少し大人になったら、一緒に飲もうね」


 真白さんが俺に投げキスをした。


「ま、今はまだ子どもだから飲めないよね。うふふ」

「どーせ、子どもですよ」

「あ、拗ねた? ねえ、拗ねた? うふふふふ」

「テンション高いなぁ……」

「会えなくて寂しかったんだから」

「たった数日じゃないか」

「数日は長いの!」


 真白さんが強い口調で主張した。

 まあ、俺も日々の折々に真白さんのことを思い出してたけどさ。


「その……私、これからも……」


 真白さんが不意につぶやいた。


「ここに来てもいいのかな?」

「えっ」

「コータくん、本当は迷惑してない?」


 真白さんが俺を見つめる。


 さっきまでの酔った様子が、そこにはなかった。

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