3 チャラ男にデレデレの魅花2(魅花視点)
「あーもう、むかつく!」
放課後になっても、魅花はまだ怒っていた。
まるで自分の方がコータに未練を持っているようだ。
その可能性に気づいてしまったことが、不快でたまらない。
「違う違う違う違う。あんな奴、キスまでしか許してないし。今の彼氏にはちゃんと最後までさせてあげたしっ」
思わず口に出して叫ぶと、周囲の生徒が驚いたようにこちらを見ていた。
「……ふん」
どうせ、こいつらは童貞や処女でしょ。
あたしはもう大人だから。
そう思うと、少し胸がスッとした。
コータだって、どうせ童貞だ。
内心で蔑み、なんとか心の平静を保つ。
(そうだ、あんな奴どうでもいい。ただのガキだもん。あたしには阿鳥さんがいるんだ……コータに未練なんてないんだ……)
コータへの想いを塗りつぶそうと、阿鳥との記憶を呼び起こす。
心の中からコータの存在を追い出すのだ。
あんな奴に未練なんてあるはずがない。
あたしはあんな奴には高嶺の花で、もっとランクの高い男と付き合える女なんだ。
だから、阿鳥にすべてを許した。
彼とは、身も心も深くつながっている。
(どうせあいつは当分彼女なんてできないだろうし。ううん、下手すると一生……ふふ、ずっと童貞だね)
そう思うと優越感が湧いてきた。
自分はすでに大人の世界を知っているのだ、と――。
優越感に浸りながら、魅花は阿鳥に出会った時のことを思い返した。
それは彼女が初体験した記念日――。
「はあ、はあ、はあ……」
阿鳥との初エッチを終え、魅花は荒い息をついていた。
「はあ……コータに悪いことしちゃったな……」
ベッドから上体を起こし、つぶやく。
体には何も身に付けていない。
豊かな胸はゆるやかに上下し、じっとりと汗の浮かぶ裸体が妖しい色香を醸し出している。
さっきまで阿鳥と重ねていた肌は、まだ官能の火照りを宿していた。
生まれて初めて男を受け入れたそこは、何かが挟まっているような違和感が残っている。
半ば飲み会の勢いもあって、阿鳥に誘われるままホテルに入ってしまった結果である。
コータに捧げようと思っていた『初めて』を、出会ったばかりの男にプレゼントしてしまった。
だが後悔などよりも、達成感の方が大きかった。
魅花は、早くセックスを体験してみたかったのだ。
好奇心と欲望の両方を満たしてもらい、満足だった。
まあ、コータに対しては罪悪感を覚えないではないが……。
「コータって彼氏くんか。はは、ボヤボヤしてるから俺が代わりに処女もらっといてやったんだよ」
阿鳥がベッド脇でタバコを吸いながらヘラヘラ笑っている。
一瞬……ほんの一瞬だけ、魅花の気持ちがぐらりと揺らいだ。
それは不安感だった。
本当にこの選択で正しかったのか?
コータではなく、出会ったばかりのこの男を相手に初体験してしまってよかったのだろうか?
漠然とした不安が一瞬胸をよぎったのだ――。
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