17 美少女生徒会長のほのかな恋心(蜜視点)

 久しぶりにコータくんと話してしまった……。


 赤羽根蜜は夢見心地だった。


 小学生のころは、周囲の標的になりやすかった。


 目立つ赤色の髪の毛。

 そして今とは違い、勉強もスポーツも平凡な成績……いや、むしろ並以下だったかもしれない。


 自衛も兼ねて剣道をはじめ、そこで一つ年下の剣ヶ峰春歌と出会った。

 すぐに友だちになり、切磋琢磨するうちに剣道の実力がグングン上がっていった。


 そんな矢先、同級生の一部に目を付けられ、髪を切られそうになった。


 怖かった。

 得意の剣道で叩きのめすこともできたはずだが、怖くて、その気力が湧かなかった。


 そこにコータが助けに入ってくれた。


 きっとケンカは苦手なんだろう。

 もしかしたらケンカをした経験自体がなかったのかもしれない。


 自分以上に怖がりながら、それでも体を張って蜜を守ろうとしてくれた。


 彼の勇気に――蜜は感動した。

 その後、春歌が乱入して彼らの一人を吹っ飛ばしたのを見て、ようやく蜜も吹っ切れた。


 あとは得意の剣道で彼らを蹴散らすだけだった。


 ――コータくんのことをもっと知りたい。


 事件が一段落した後、強烈に感じた。


 今から振り返ると、きっと、それは蜜の初恋だったのだろう。


 だが、その気持ちが『恋』なのかどうかを自覚する前に、両親の仕事の都合で引っ越すことになってしまった。

 蜜には、自分の気持ちの正体を確かめるすべがなかった。


 だから、こっそりと彼のことを調べた。


 ちょっとストーカーっぽいかな、と自分でも思わなくはなかったが――。

 彼への興味が勝った。


 それから数年して、ふたたびこの町に戻ってくることができた。


 そして今日、コータと無事に再会できたのだ――。




(うん、やっぱり素敵だな、コータくんって)


 蜜は彼を見つめながら、うっとりとした。


 今は……再会した今なら、はっきりと分かる。


 小学生のころに抱いていた思いは、やはり『恋』だったのだと。

 そしてその思いはくすぶったまま、今ふたたび燃え上がろうとしているのだと――。


 彼を生徒会に誘ったのも、結局のところそれが理由だ。


 なんのかんの理由を付けつつも、


(コータくんと一緒に過ごしたい)


 ただ、それだけの理由だった。



***

次回から第3章になります。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!


***

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