16 蜜が同級生グループにざまぁする

「ぐえっ」

「うああっ」


 次々に悲鳴が響き、蜜ちゃんが彼らを叩き伏せていく。

 男女とも頭や腹部を押さえ、起き上がれない。


「つ、強い……強すぎる!」

「く、くそっ……!」

「申し訳ありませんが最低限の防衛をさせていただきました。それと――髪を無理やり切るのは立派な犯罪ですからね? 後ほど警察に通報いたしますので」

「け、警察……!?」

「当然でしょう。法の裁きを受けていただきます」


 蜜ちゃんの視線は冷たかった。


 普段は穏やかで優しいけど、一度思い切ると『とことんやる』タイプなのかもしれない。


「ひ、ひいいいいいっ」


 そいつらは無様な悲鳴を上げて逃げていった。


 まあ、目撃者も大勢いるし、通報されれば逃げ切れるものじゃないだろう。


「ありがとうございます。助けていただいて」


 蜜ちゃんが俺に向き直った。


「いえ、俺は何もしてないので……」


 正直、本当に何もしていない。

 礼を言われるのが恥ずかしいくらいだ。


「そんなことないよ! 一番に出てきたじゃない! 勇気あったよ、コータくん!」


 春歌が言った。


「ええ、嬉しかったです」


 と、蜜ちゃんが微笑む。


「体を張って私を守ろうとしてくださいました。感謝しています」

「い、いや、そんな……」




 ――後日、今回のことが明るみに出て、警察沙汰になったようだ。

 彼らの将来にも影響は出るだろう。


 まあ、自業自得なんだが。


 で、その後、蜜ちゃんは親の都合とかですぐに転校していった。

 いつの間にかこっちに戻って来てたんだな。


「そういえば、そんなことが……あったっけ。懐かしいなぁ」


 話しているうちに、当時の記憶がどんどんよみがえってくる。


「私、あのときにいたく感激しまして。以来あなたのことは注目していたのですよ。転校した後も、あなたのことを追跡していました。探偵とか色々雇って」

「た、探偵!?」

「そこまで行くとストーカーじゃない……?」


 春歌が若干引いたような顔をしていた。


 ……正直言って、俺も引いたけど。


「? そうでしょうか?」


 蜜ちゃん……じゃなかった、赤羽根先輩だけがキョトンとした顔だった。


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