14 生徒会へのお誘い


「あなたに生徒会に入ってほしいのです」


 赤羽根先輩が俺を見つめて言った。


「俺が……?」

「書記を務めていた方が急な転校で……一人欠けてしまったんですの」


 いかにもお嬢様という話し方だが、この人は一般的な家庭の人だったはずだ。

 たぶん趣味でそういう話し方をしているんだろう。


「え、コータくんだけ? ボクは?」


 と、横から春歌が言った。


「いや、お前は剣道部があるだろ」

「そうだけど~」


 春歌が軽く頬を膨らませた。


「なんか面白そうだと思って」

「いや、トラブルだからな、これ」

「ふふ、でも楽しいですよ。生徒会のみなさん、面白い方たちばかりで」


 赤羽根先輩が優雅に微笑む。


「そうですね……正式なメンバーじゃなくても、善意のお手伝いということでしたら、いつでも来ていただいて構いませんよ。お茶とお菓子くらいしか出せなくて申し訳ないのですが……」

「わーい、じゃあ部活が暇なときに見に行くねっ」


 春歌が嬉しそうに言った。


「それで、話を戻しますが……どうでしょうか、影咲希くん」


 と、赤羽根先輩が俺を見つめた。


「いきなり言われても決断しづらいと思いますし、すぐにとは言いませんが、どうか考えていただけませんか?

「うーん、俺が生徒会か……」


 まあ、普段の俺は帰宅部だし、生徒会の仕事をやること自体は問題ない。


「しばらくすれば、新たに補欠選挙をするとは思いますが、今ちょっと緊急の要件がありまして……」

「なるほど。でも、どうして俺を?」


 こう言ってはなんだけど、俺は勉強もスポーツも特に秀でたものはない。

 対して赤羽根先輩は文武両道で勉強もスポーツも学年トップクラスの超人みたいな人だ。


 わざわざ俺に声をかけた理由はなんだろう。


「私、あなたに会うのは初めてではないのです」


 赤羽根先輩が俺を見つめる。


「覚えておられませんか?」

「えっ……?」


 そう言われて、俺は記憶をたどった。


 あれ、先輩の赤い髪――。

 そうだ、こんなに特徴的な髪の色をどうして忘れていたんだろう。


 あれは、俺が小学生くらいのときの話だ――。

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