10 週明けの登校で修羅場が始まる?

 あの後、真白さんは妙にそっけなく帰っていった。

 まだ引っ越し後の後片付けがあるんだとか。


 大変なんだな、引っ越しって……。


 俺の場合は荷物も少なかったし、両親が手伝ってくれたりもしたから、比較的簡単だったけど――。




 ――そして、週が明けて月曜日。


 俺はいつも通りに登校した。


 私立赤羽根あかばね学園。

 それが俺の通う高校の名前だ。


 学力的には中の上くらいだろうか。

 スポーツにも力を入れていて、全国クラスの部活がいくつかある。


 校門のところで春歌に会った。


「おはよー、コータくんっ」


 黒髪ポニテをリズミカルに揺らしながら、春歌が元気よく走ってくる。


「おはよう、春歌。今日は朝練ないのか?」


 春歌は剣道部のエースである。

 ちなみに去年は全国大会の個人戦で優勝、団体戦でもベスト4まで行ったんだとか。


「今日はないよ~。でも、体がウズウズしちゃったから、自主練代わりに走ってきたっ」


 と、春歌。

 本当に朝から元気だ。


「ランニングか」

「ん。軽く三十キロくらい」

「全然軽くないよな」


 まあ、春歌の基準だと軽いのかもしれない。

 俺もすっかり彼女の基準に慣れてしまっていた。

 と、


「……おはよ、コータ、それに春歌も」


 やって来たのは魅花だった。


「あ、ああ……おはよう」


 俺は複雑な思いを噛み締めつつ、挨拶を返した。

 一方の春歌はあからさまな敵意をむき出しにしているようだ。


「ふーん……?」


 険しい表情で魅花を見据える。


「えっ、な、何?」

「……ちょっとは恥を知ればいいんじゃないかな」


 春歌が言った。


「恥? なんの話よ」


 魅花の表情も険しくなった。


「いくらなんでも、コータくんに対してひどいと思う」

「お、おい、春歌」


 俺は慌てて止めようとするが、春歌が首を横に振った。


「ううん。言わせて、コータくん」

「……事情を知ってるってこと? けど、あんたには関係ないよね」

「あるよ。コータくんはボクの大事な友だち」

「友だち……ねえ」


 魅花がじろりと春歌をにらむ。

 春歌も魅花をにらむ。


 おいおい、なんか修羅場っぽい空気になってるぞ……。

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