3 チャラ男にデレデレの魅花(魅花視点)


 進藤しんどう魅花みはなは幸せいっぱいな気分で恋人と一緒に歩いていた。


 前の彼氏であるコータには別れを告げた。


(これであたしは正式に阿鳥あとりさんの彼女だよねっ)


 ほとんど無意識に、魅花はぴょんと一回跳んでいた。


 彼と晴れて恋人同士になれた、という事実がたまらなく嬉しい。

 コータに対して申し訳ない気持ちがないわけではないが、ただ、


(しょうがないよね、阿鳥さんのことを好きになっちゃったんだもん)


 うん、しょうがない、しょうがない、と心の中で何度もつぶやいた。


 コータへの気持ちがなくなってしまった以上、別れるのが正しい選択だ。


 コータもいずれ新しい恋に出会えるだろうし、あまり罪悪感を覚える必要はない、というのが魅花の考えだった。

 そんなことより、新しい恋にのめりこもう。


「ふふ。ふふふふ……ふふふのふ」


 顔がにやけっぱなしだ。


「なんだよ、気持ちわりーな」


 隣を歩く彼――須山すやま阿鳥あとりが顔をしかめた。


 サラサラの茶髪に浅黒く日焼けした肌、整っているが軽薄そうな容姿。

 いわゆるチャラ男の系統に属するルックスである。


 十分に綺麗な顔立ちをしていると思うし、彼の容姿には満足していた。

 こうして隣で歩いていても、周囲に恥じる必要がない。


 コータの場合は……別にブサイクではないが、やはり真面目で地味な容姿には不満もあった。


 その点、阿鳥はまあまあ合格だった。


「あ、ひどーい。阿鳥さんと一緒にいられて幸せなんだもん」

「ふーん……」

「あ、今、あたしの胸見た!」

「お前って着やせするよな」


 阿鳥がニヤニヤしている。


 確か、彼と初めてエッチしたときも同じようなことを言われたものだ。

 そのあと、さんざん胸を揉まれたことを思い出し、少しだけ頬が上気した。


「ふ、ふふん、そうでしょ。後で見せてあげるね」

「おう、さっそくホテルに――」


 阿鳥が身を乗り出す。


「まだ早いよ!? 今日は会ってから十分も経ってないよ!?」

「いいだろ。体だけの関係なんだから」

「もうっ、彼氏と彼女でしょ!」


 思わず抗議する魅花。


「あ、ああ。そうだったそうだった」


 阿鳥が苦笑する。


「冗談でもそういうのはやめてよねっ」


 魅花はぷうっと頬を膨らませた。


「いや冗談ってわけでも……じゃなかった、そうだな。彼氏彼女だよな、俺たち」


 阿鳥は魅花の頭をくしゃっとしながら撫でた。

 そうやって触られていると心地いい。


 魅花はうっとりと目を細めながら、彼との出会いを思い出す。


 ――阿鳥とは一か月ほど前の合コンで知り合った。

 ちょうどコータに対してマンネリ感を覚え始めていたころである。


 魅花にとってコータは初めての彼氏だ。

 やっと処女を卒業できると期待していたのに、真面目なコータは一向に手を出してこようとしない。


 自分から仕掛けるのは、なんとなく彼女のプライドが許さなかった。


 だが、阿鳥は違った。

 出会ってすぐにグイグイ来てくれた。


 自分が彼氏持ちだろうと、『俺が奪ってやるよ』と言わんばかりの態度。


 そんな彼に、魅花はすぐに惹かれた。

 出会って間もないことなど関係ない。

 きっと自分は彼のような男を待っていたのだ。


 ポーッとなった魅花は、そのままの勢いで阿鳥とホテルに入ってしまう。


 念願の処女喪失は、思っていたほど感動的でもなく、気持ちよくもなかった。

 ただ、恐れていたほどの痛みはなかったので、そこはホッとしたが――なんだか拍子抜けだった。


 ともあれ、こうして魅花は晴れて『大人の女』になったのだった。




***

※次回はコータ視点に戻ります。


***

〇『全自動・英霊召喚』小説・コミック1巻がそれぞれ発売中です!

https://kakuyomu.jp/users/rokuasa/news/16816927862671591270


〇読んでくださった方へのお願いm(_ _)m


よろしければ、☆☆☆をポチっと押して★★★にしていただけると、とても嬉しいです。

今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひ応援よろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る