5 思い出と、朝チュン
まどろみの中、俺は小さいころのことを思い出していた。
「へえ、コータくん、小学五年生かー。大きくなったね」
綺麗なお姉さんが俺の頭をぽんぽんと撫でる。
「もう子どもじゃないぞ」
それこそ子どもみたいな反論をする俺。
「あはは、ごめんごめん」
彼女――真白さんが微笑む。
「うん、かっこよくなったよね。コータくんが大きくなったら、結婚してあげよっか?」
「えっ」
「――なんて、ね」
悪戯っぽくペロリと舌を出す真白さん。
「び、びっくりするだろー」
「これくらいでびっくりしてたら、まだまだ子どもよ~」
「俺、知ってるぞ。真白お姉ちゃんだって、彼氏いないくせに。菜々美お姉ちゃんから聞いたぞ」
「うっ、実は彼氏いない歴イコール年齢なのよね……」
俺の言葉に真白さんがたじろいだ。
「まあ、俺が大きくなったとき、お姉ちゃんに彼氏がいなかったら結婚してやるよ」
「ふふ、期待してるね」
「俺の方に彼女がいるだろうけど」
「どうかな~。コータくんも年齢イコール彼女いない歴になるかもよ」
「ならない! 絶対!」
子どものころの、他愛のない思い出。
だけど、たぶん。
俺が真白さんに恋をしているとはっきり自覚したのは、この時だったと思う。
話している間中、胸がずっとドキドキしっぱなしで。
甘酸っぱい感情が全身に駆け巡っていたから。
きっと、これが俺の初恋――。
――目が覚めると、真白さんはすでに起きていた。
台所の方で何か作業をしている。
「そうか、俺は……」
昨夜のことを思い出した。
興奮していたり、必死だったりで、ところどころ記憶があいまいだけど――。
でも、間違いない。
俺は真白さんと……エッチをしたんだ。
そう、生まれて初めて男女の行為を。
それにしても清純そうな真白さんが、俺を押し倒してくるなんてな。
意外と肉食系なんだろうか?
俺以外の相手ともそういうことをしてきたんだろうか?
……してるよな、そりゃ。
アラサーだし、それなりの男性経験はあるだろうし。
そう考えると、正直――嫉妬心が湧いた。
だけど、昨日の刺激的な出来事の記憶が、すぐにそんな嫉妬をかき消してしまう。
薄闇の中で、真白さんの白い裸体が蠢いていたのを思い出す。
量感のある体を抱き締め、上になり、真白さんの内部に入っていって――。
あらためて振り返ると、めちゃくちゃエロかったな。
頭の中がカーッと熱くなった。
女の人と、そういう行為をする――魅花相手に何度も妄想したことだけど、まさか初体験が偶然再会した真白さん相手になるとは。
しかも――魅花にフラれた、その日に。
「ん、これって……」
ふと気づくと、シーツに赤い小さな点がぽつぽつとあった。
「血……?」
「そ、それは――」
台所から真白さんがハッとした顔でやって来た。
見た感じ、どこかを怪我したわけじゃなさそうだ。
だとしたら、まさか……。
「あの、真白さん、もしかして――初めてだった?」
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