第19話 懇親会
◆◆◆
時間は残酷にもすぎていき、昼休みになった。
俺たち黒羽側の生徒会メンバーと、白峰側の生徒会メンバーは、生徒会室に集まっている。このメンバーで顔を合わせるのは、今日で二回目だ。
「それでは第一回親睦会として、食事会を始めさせていただきます。皆さん、お弁当は持ってきましたね?」
雪宮が代表して進行をする。
その目の前には、水色の巾着に包まれた弁当箱が。俺が作ったものだけど、気に入ってくれるか……そわそわするな。
「ですが、このままだと普通に食事をして終わってしまうと思います。なので、これから席替えを致します」
ほう、席替えか。確かにこのままじゃあ、俺たちは俺たちで。向こうは向こうで固まって食べることになるし、いいアイデアだな。
いつの間に作っていたのか、雪宮がボックスの中に入れている紙を引き、ホワイトボードに席と名前を記入していく。
どうやら机を円形状にして、男女交互になるようにしているみたいだ。
ふむふむ。確かにこれなら、色々と話ができる環境にはなる……が。
「「「あば……あばばばば……!?」」」
問題は、ド緊張しているこいつらなんだよなぁ……。
勿論俺だって緊張はする。でも、こいつらみたいにここまで緊張はしない。
ちゃんと親睦を深められるか……そこだけが心配だ。
「おいお前ら、ちゃんと親睦深めろよ。普通に話をするだけでいいんだ。普通に」
「でででででもよ、会長……!」
「でもじゃない。覚悟決めろ、男だろ」
「うぐっ……」
全く、変なところでチキンなんだよな、こいつら。
「はい、席順が決定したので、移動してください」
お、決まったか。どれどれ、俺の席はどこだ?
【雪宮氷花】【八ツ橋葉月】【黒月陽子】
……おい、これはなんの冗談だ。
陰謀か? それともいやがらせか?
雪宮の顔を見ると、思い切り目を逸らされた。
こいつまさか……やりやがったな……!
俺以外の男と話すのが無理だから、俺を隣にしやがった……!
親睦会なのに、親睦できてねーじゃねーか!
「これで最終決定です。では、移動を」
俺が反論する前にさっさと進めやがった。
はあ……仕方ない、移動するか。
弁当を持って移動すると、左隣に雪宮が、右隣に黒月がやって来た。
「ぬへへっ。はづきちと一緒にご飯なんて、ひさびさだし!」
「だな。まあ俺だけじゃなくて、隣の奴とも話してやってくれ」
「わかってるよぅ。君、書記くんだっけ? よろよろ~」
黒月の左隣……黒月側の書記が、がちがちに緊張してロボットみたいに頷く。
お前、どんだけ緊張してるんだ。まあ女子に耐性がないのに、いきなり美少女ギャルと隣になるって、そりゃあ緊張するか。
「あっはー! 緊張しちゃってんだ、かわいーじゃん♪」
「はひ!? ぃぇ、しょの……!」
……ま、あっちはほっといて大丈夫か。それより。
俺は横目で雪宮を見ると、素知らぬ顔で前を向いていた。こいつ……。
俺はなるべく小声で、雪宮にしか聞こえないように話しかける。
「おいコラ雪宮。この並びわざとだろ」
「なんのことかしら」
「今日の夜は納豆な」
「ごめんなさいやりました」
「素直でよろしい」
だったら最初からそう言えばいいのに。全く……。
「私が他の男子生徒と話したら、空気悪くするだけで終わってしまうでしょ」
「まあその通りだけどさ。努力しろよ」
「無理ね。私がつんけんしてもまともに話せるの、あなたしかいないから」
「それ褒めてる?」
「ええ、勿論」
褒められてるように聞こえないのは気のせいか?
俺はそっとため息をつくと、雪宮が席を立って注目を集めた。
「それでは、食事会を始めます。皆さん、手を合わせてください。いただきます」
「「「いただきます」」」
こうして、初めての懇親会がスタートしたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます