出る杭は打たれるが出過ぎた杭は誰も打てない。

@Bottom_is_dead

第1話

出る杭は打たれるがなんとかかんとか……。

どっかの有名企業か何かの人が言った言葉らしいが実際私がその言葉を聞いたのは今はもう現代病とも言われる認知症になってしまった祖母からだった。

にしてもこの言葉、後半が思い出せない…。

そんなことを考える午前11時半過ぎ。


キーンコーンカーンコーン〜♪

うわっ、授業が終わってしまった…。私は急いでノートに写すも、僅かに日直が黒板を消す方が早かった。無念。まあ成績は中の下、このくらい大丈夫なはずだ………。多分……。


「あーあ、また授業中に絵でも描いてたんでしょ〜?」

『えっ…?小夏ちゃん!』

「はい、私のノート!明日返してくれたらいいよ〜」

『ありがとう…あ、でも考え事してたんだよ?!絵も描いてたけど…』

口では強気でありながらも目の奥はジーンと熱くなる……ことはなかった。いや、実際言われたら勿論なると思うが。と言うのも残念、私には友達が居ないのだ。せめて憧れの小夏ちゃんで妄想くらいさせてくれ。

はー、最悪だ。いや、終わったことだ。今はお昼、ご飯だ!!

とは言えノートの件は何とかしないとだなあ。

私は席を立って購買に向かう。

教室では既に数名のクラスメートがマドンナを囲んで昼食をとっていた。

ちぇっ、、心の中で軽く舌打ちをし、自分より遥かに高い位の彼女らにとれもしないマウントをとってみる。いや、少なくとも画力ではマウントをとれるかもしれないな。彼女たちの中に神絵師様が居ないことを願おう…。


購買の近くまで来たところで複数人の男の子がいるのが見えた。

真ん中に居るのはクラスメートの優くん…かな、多分。

男の子達との距離が近づくにつれて会話の内容も聞き取れるようになってきた。

そして気づく、"カツアゲ"だ。私はその時止めた方がいいのかな、とかも思ったのだが怖いのが勝ってしまい即座にその場を離れ、いそいそと売れ残りのパンを買って教室に戻った。

やはり教室に優くんの姿はない。気にしないのが1番なのかもしれないが、見てしまったからには気になって仕方がない。

かと言って今の私には何もできないので大人しく昼食をとることにした。

しかし思考は目の前のパンに集中していない。

優くんが…カツアゲ……無視しても良かったのだろうか…。見て見ないフリ、傍観者と言うのだったっけか。前々から分かっていたことではあるが内気な私では、やはり杭を打てる人間にはなれないのかもしれない。


あぁ、思い出した。

もう忘れない、とは思いつつも前回の授業から机の上で開きっぱなしのノートの右上に小さくメモをした。


『出る杭は打たれるが出過ぎた杭は誰も打てない。』

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