第6話 再会

 悠也は緑生い茂る新緑の里山に探検隊のように足を踏み入れた。木々を押し分け、靴を汚しながら進んだ。やがて開いた土地に出た。そこは例の悠也の秘密基地だった。

 悠也が掘り進めていた穴は、当たり前だが、誰にも触られていなかった。つまり誰もここには来ていないということだ。いや、あのアスカという少女は知っている。それにしてもなぜアスカはここに来たのだろうか?

 悠也はそんなことを考えながら、家から持参した小さいスコップで穴を掘り始めた。ゆくゆくはこの穴の上に木を被せ、竪穴式住居のようにするつもりだ。悠也はせっせと汗を流しながら穴を彫り続けた。五月の風が大きい木々をざわざわと揺らした。急に冷やりとしてきた。それは、太陽が大きな雲に姿を隠したからだと悠也は思った。

 すると後ろに気配を感じた。一瞬、悠也の腕に鳥肌が立ち、悠也を包み込む空気が変わったと悠也は感じた。

 悠也は素早く後ろを振り向いた。

 またしてもアスカがそこにいた。

 アスカは白いワンピースに赤いバレッタで長い艷やかな黒髪をポニーテールにしていた。悠也は少しアスカに見惚れてしまっていた。

 「悠也君、バカみたいな顔になってるよ」

 悠也はアスカに指摘された。アスカは得意気な顔をしていた。

 「あっ、まじかっ。俺そんな顔なってたか」悠也は少し恥ずかしくなったが、アスカに見惚れていたことは、事実として、心のなかで認めざるをえなかった。

 悠也は再びアスカを見た。目が大きくて、眉が整っていて綺麗だ。ドラマに出てくる子役みたいだなと思った。

 二人の間を僅かな沈黙が支配した。

 するとアスカが唐突に言った。

 「なんで私がここにいるか、聞かないの?」

 

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