第5話 ひとりぼっち

 悠也は朝、アスファルトで塗装された、雨上がりの通学路を弱虫メガネのサトシ登校していた。

 サトシが恐る恐る言った。

 「凛々花めっちゃ怒ってたで。悠也のこと無視するって言ってたで」

 「ほんまか」悠也はやや驚きながら言った。しかし心の中では、それがどうしたんだ、と思っていた。

 「今日からクラス全体で悠也君のこと無視することになってるで」

 「ほんでサトシも俺のこと無視するんか?」

 「いや、僕はそんなことはしないよ。」

 「お前はええやつやな。ほんじゃ俺は学校では誰とも話ができひんということか?」

 「うん。たぶんそうなると思う。だって凛々花がみんなに悠也君と絶対に口聞くなってみんなに言ってたから」

 凛々花は学校では一番かわいくて影響力がある。凛々花の言うことはみんな聞くだろう。

 「じゃあ俺もう学校行けへんわ」どうせ学校に行ってもみんなから無視されるだけだ。そうなったら学校でおしゃべりできないから楽しくない。だから悠也は学校に行かないことにした。

 「なんでや。学校行こや」サトシが言った。

 「いやや。もうええねん。凛々花にも嫌われたし、みんなにも無視されるし、それやったら学校行かへん。それ里山でも行ってくるわ。秘密基地も作ってるし」悠也はそう言うと通学路の歩いてきた道を引き返した。「サトシ、ほな、またな」悠也は引きつった笑顔でそう言った。本当は学校に行って、凛々花と仲直りしたかったが、そんな幼稚園児地味たこと悠也にはできなかったし、自分のプライドが許さなかった。

 それから悠也は帰宅した。

 家には母さんがまだいた。父さんはもう仕事に行っていた。

 「ただいまぁ」悠也は悪びれず言った。

 「どうしたん?なんで帰ってきたん?」母さんは驚いていた。

 「なんとなく帰ってきた」

 「なんとなくってどういうこと?」

 「なんとなくはなんとなくや」

 「なんとなく帰ってきたなんか許さない。早く学校に行きなさいっ」

 「いやや、行きたない」

 「もうお母さん仕事行かなあかんから、一緒に車で送ってあげるから」

 「ほんまに行きたないねん」

 「ほんまあんたはアホやな。じゃあ勝手にしなさいっ。もう仕事行くからっ」

 母さんを見送った悠也は、もうどないでもなれと思い、里山の秘密基地へ向かった。

 

 そこでまた思いもよらない出会いがあった。

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