第3話 謎の少女。登場。

 街はずれの公園から続く小道を、ずうっと登っていくと里山に辿り着く。里山には誰も踏み入らず、整備はされていなく、木々が生い茂っていた。

 春の五月。悠也は学校を抜け出し、里山へやってきた。

 さて、何をしようか?

 そうや。秘密基地でも作ろう!

 図書室の本で読んだ縄文時代の竪穴式住居みたいなやつを作ろう。

 悠也は里山の中を木々を押し分けるように練り歩き、程よいスペースを見つけた。

 よし、穴を掘ろう!

 悠也は平たい木の棒を見つけ、スコップ代わりにして穴を掘った。

 悠也は休む間もなく掘り続けた。

 土は柔らかく、すぐに五十センチほど掘れた。

 悠也は穴の中で座って少し休憩することにした。

 悠也の頬を汗が伝う。

 すると背後で音がした。

 誰かいるっ。

 悠也は立ち上がった。

 そして後ろを見たら、知らない女の子が立っていた。

 肩までの髪をふわりと揺らし、その少女は静かに微笑んだ。

 「こんにちは」少女は言った。

 「えっ誰っ?」悠也は驚いた。「誰なんホンマに」

 「私はアスカ」

 「ここで何してるん?」

 「それは私のセリフよ」

 「質問に質問で返さんといてくれる?」

 「あなた悠也くんだよね?」

 「そうやけど。ホンマにまじで何してるん?女子が里山にいたら危ないで」

 「…」

 「帰ったほうがええんちゃん?」

 「それは大丈夫」

 「えっ大丈夫ちゃうやろ」

 「あなた学校抜け出したりしたらダメじゃないっ」

 「えっなんでそれ知ってるん?」

 「あなたの担任の先生、心配してお母さんに電話かけたよ。大事になる前に学校に戻ったほうがいいわ」

 「まじか。じゃあそうするわ」

 悠也は学校に帰ることにした。

 学校までの道のりをアスカと歩いた。悠也は校門のところでバイバイとアスカと別れた。

 悠也はその後、担任の先生からこっ酷く叱られた。

 結局、里山で出会った女の子は何者だったんだろうか?なぜ悠也が学校を抜け出したことを知っているのか。それと担任の先生がお母さんに電話したことも。悠也の頭の中でそのことに関する疑問は膨らむばかりだった。

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