第2話 スカートめくり

 悠也のクリっとした二重まぶたの前には、すでに凛々花の薄いピンク色のスカートが揺れていた。凛々花はおしゃべりに夢中でこちらに気づいていない。

 悠也の心に「早くめくれよ」という、弱虫メガネの柄にもない声が聞こえてきた。


 悠也はワクワクしてきた。こういうスリルが悠也は好きだった。


 悠也は一気に背をかがめ、スカートの端を掴み、勢いよく持ち上げた。

 何が見えるかな?真っ白な太ももと青いパンツが見えた。

 凛々花はスカートがめくりあげられると同時にそれを手で押さえた。「キャ~」というお決まりの声も忘れずに。

 凛々花はこちらを振り返ると赤面していて、目に涙を溜めている。それが今にも零れ落ちそうだ。

 「私、職員室行ってくる。先生に言ってくる」と妙に静かに言った。それはあまりにも小学四年生にしては大人びた態度で、悠也はその声色に怖気づきそうになった。


 スカートめくりが終わり、悠也は、どうだ!と言わんばかりにクラスメイトを見た。なぜかクラスメイトは白けており、悠也に対して白い目を向けていた。男子も女子も誰も悠也に声を掛けてこない。弱虫メガネのサトシまでそういう態度だ。悠也はそれが気に食わず、「お前らどうや!やったったで!」と言った。しかしクラスメイトはそれを無視した。それから静かだったクラスメイトたちは、それぞれ会話を再開した。

 みんなどうしたんやろ?楽しくないんか?

 悠也は疎外感を感じ、戸惑うように小さな身体を揺らしながら、ただそこに突っ立っていた。

 しばらくして悠也はそれに耐えきれず、休み時間中にも関わらず、学校から帰ってしまった。


 ひとりでとぼとぼ家までの道を帰る。なぜかこういうときに限って、誰ともすれ違わなかった。悠也は誰かに話しかけてほしかった。なんでもいいから。自宅に着くと、誰もいなかった。あたりまえだ。お父さんとお母さんは仕事に行っているから。



 悠也は帰宅後、何もすることがないので、なぜか近くの里山に向かった。そこで遊ぼうと思った。とにかく悠也はひとりになりたいと思っていた。秘密基地でも作ろうか。

 

 悠也はこのあと、里山で謎の少女と出会うことになる。このとき、悠也はその出会いを予期していなかった。

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