第2話 誓約書

ハンマー男がカップル男に提示した紙にはこう書かれていた。





《誓約書》



 私は、以下の事項を厳守することを誓約いたします。






乙___は今後、身体の不自由な方が止める駐車スペースに金輪際止めない事を固くお約束致します。


もし、約束を破ってしまった場合は違約金として____円支払う事を厳守致します。



令和 年 月 日



   住 所 


   氏 名         印





「この書類にサイン捺印して頂いたら、今、この場で2千万円お支払い致しましょう。あ、金額のところは、え~と、2千万でしたっけ?弁償金?じゃあ2千万と書いて下さい。」



ハンマー男は何故か笑いながら言った。それが余計に不気味さに拍車をかけた。



カップル男は女に耳打ちしながら聞いた。



「どうする?こいつ頭おかしそうだし、どうせ次止めてたとしてもバレないだろう?」



「そうね。でも、とりあえずサインしなかった場合も聞いといたら?」



カップル男はそうだなと小声で言った。



「じゃ、じゃあ、もしサインしなかったらどうなるんだよ?」



カップル男はハンマー男が少し怖かったのか、変に刺激しないよう気を使いながら聞いた。



「そうですね~。警察にでも通報して、被害届出して、損害賠償でも請求して訴えて裁判して下さい。ま、途方もない時間と手間がかかりますけどね。」



ハンマー男はさきほどの笑い顔から無表情に戻り説明した。



「ほ、ほ、本当に2千万この場でくれるんだな?」



カップル男は刺激しないよう気を使いながら聞いた。



「もちろん!」



ハンマー男は元気よく返事しながら地面に落ちているハンマーを拾った。カップルはハンマーで殴られるのかと一瞬ビクッとなった。



「わ、わかったよ!サ、サ、サインしたらいいんだろ!」



カップル男はハンマー男が差し出した書類を受け取り、サインをして親指で捺印した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る