第40話 尾行者

 《エディ後ろにそれらしい奴は居ないので、正面の奴をやるぞ》


 《駄目だ、そいつ等を盾に魔法攻撃を防ぐので、魔法使いを見付けて殺ってくれ》


 《OK任せろ、皆殺しは不味いよな》


 《偉そうな奴が数人いれば良いんじゃね》


 《どれが偉い奴か、判るのか》


 《仕立ての良い服を着ている奴が、偉い奴だろう》


 《おい、此れからそれを探すのか。面倒だから適当にやるよ》


 《クロウに注意が向いて無いから、早めにお願いね》


 俺の姿が消えたので狼狽えているが、直ぐに振り返り俺の姿を見るや腕を目の前にやった。


 《クロウ、此奴等は俺達の事を知っているぞ》


 《あーん、何の事だ》


 転移したら直ぐに振り返り、俺を見るや即座に腕を目の前にやり目潰しを防ぐ行動をした事を知らせる。


 《では王家の刺客か?》


 《多分だが・・・王家から情報が漏れたか、俺達が襲った貴族達から漏れた恐れもあるな》


 《成程ね。奴等はさっきからお前を見ながら矢鱈とキョロキョロしてるので、変だと思ったんだ》


 《では殺さずに吐かすか。でもよ、もう8人程死んでもらったからなぁ》


 《お仕事が早いですねぇ》


 《仕事が早くて正確なのは、社会人として評価が高いんだよ》


 《俺は社会人になって直ぐに殺されたので、知らなかったよ。肝に銘じておきます》


 《今度は30mコースでどう》


 《了解!》


 〈ウッワーァァ〉

 〈ヒェー〉

 〈エッエー〉

 〈ギャアァァァー〉


 それぞれの感想を述べながら落下して、呻いてる奴が多数いる。

 周囲を見回しても残っている奴はいない様なので、呻いている奴等を一カ所に集める。

 転移魔法を使えば一々運ばなくて済むので楽で良い。

 手強そうな奴等なので、抵抗出来ない様に両肩に鉄棒を振り下ろして鎖骨を砕いておく。


 改めて見るとひ弱そうなのが一人もいない、一騎当千の猛者揃いって感じだ。 クロウが仕留めた男達も集めたが、これもゴリゴリの戦闘員って感じの男達だ。

 全員似たような冒険者風の衣服で、指揮官の見分けがつかない。


 《クロウ、どいつが指揮官か見分けがつくか》


 《無理》


 えらく簡単に言ってくれるが、俺もさっぱり判らない。

 でもいいや、喋ってくれたら判る事だし、喋らなければ生きたまま野獣の餌食になってもらおう。

 俺を殺しに来たんだ、負けたら死ぬ覚悟くらいは出来ているだろう。

 一人前に出して聞いてみたが、喋る気は欠片も無さそう。

 残りの者達も、ニヤニヤと笑って俺を見ている。

 その男の両足を特注ショートソードの峰で叩き折り、衣服を全て切り裂き素っ裸にして皆に説明。


 「よく見ておけ今生のお別れだ。彼は此れから素っ裸で一人草原に放置されて、野獣に食われて生を終える事になる」


 そう告げ顎の骨を砕いてから、裸の男を水平に跳ばして野獣の餌にする。

 次の男も両足を折り衣服を切り裂く、又もショートソードの使い方間違っている気がするが気にしない。


 〈お前のやっていることは人の道に外れている。恥ずかしくないのか!〉


 「はれぇぇぇ、20数人で一人を襲って殺そうとするほうが恥ずかしい事だと思うよ。それに比べたら極めて人道的、死にたくなければ喋れば良いんだよ」


 淡々とお仕事を熟すのが社会人の勤め。

 残り少ない人生だろうが俺の人生じゃない、クロウにも頼んで水平に跳ばしてもらう。

 10人ほど素っ裸にして遠くに投げ捨てていると、漸く喋る気になった奴が泣き言を言ってきた。


 「頼む、同じ殺すならスッパリ殺してくれ。野獣に生きたまま食われる何て嫌だ」


 一休みして剥ぎ取った衣服から財布の革袋を取り出し、金と剣だけをお財布ポーチに投げ込み、残りの衣服やブーツは火球に放り込んで燃やしてしまう。

 お財布ポーチも有ったが構わず燃やしたが、普通に燃えて何も残らなかった。


 〈やはりお前は盗賊だったんだな。この屑野郎が〉

 〈お前の様な盗賊に、恨まれる様な主人ではなかったのに〉

 〈黙れ!〉


 「主人か・・・お前達の素性の見当が着くよ。拐かされて奴隷にされた人々を遣り取りして、玩具にする様な屑な主人を持った事を諦めな」


 殺してくれと懇願してきた男の前に行き、誰の命に従っているのか聞いたが黙り込んだ。

 此の男を入れて残り9人全部で27人もいたのかよ、クロウが居なきゃ一苦労って、冗談じゃねえ。

 死んでいる奴の衣服も剥ぎ取って燃やし、死体は方角を決めず無差別に跳ばす。

 何か死体処理人な気分になってきた、後8人服を剥ぎ取るだけでも結構重労。

 3人が泣き言を言い出したので残して、残りは野獣に与える。

 今夜はご馳走が沢山で野獣も大喜びだろう。


 「さてと3人残ったが、聞かれた事を素直に喋るなら楽に死なせてやるよ。嫌なら此れから痛い思い、違ったな熱い思いを散々して死ぬことになる」


 そう言って彼等の目の前にビーチボール大の火球を浮かべる。

 暑さに仰け反っているが後ろにも火球を作ると、慌てて避けるが避けた方避けた方にと次々に火球を作る。

 手足が使えないので避けるのも限界になり、暑さに悲鳴を上げるが容赦する気は無い。


 〈頼む殺してくれ〉

 〈もう止めてくれお願いだ〉


 「俺を殺しに来たんだ楽には死なせない。楽に死にたければ喋れ! 誰に命じられて来たんだ、お前達の主人だった奴の名前は」


 熱さから逃れる為に手足の痛みを無視して転がって逃げるが、生活魔法のフレイムだ幾らでも出せる。


 「ブラバン・・・ナルゲン・ブラバン侯爵の親族に頼まれた。俺達は元ブラバン侯爵の騎士団だ」


 「全員ブラバン侯爵の騎士団の者か」


 「そうだ、頼む殺してくれ! 熱い痛い」


 「ブラバン侯爵の親族って誰だ! 其奴等が俺の事を何処から知った?」


 「エイメル伯爵夫人だ、ローザン・エイメル伯爵夫人はブラバン侯爵の妹だ。あんたの事は、多分王城や後宮に行儀見習いや侍従やメイドとして送り込んだ者からの報告だと思う・・・もう止めてくれお願いです」


 とうとう泣き出したよ、他の二人も同様の事を言ったが他家の元騎士も居たように思うと言ったが、既に投げ捨てて何処に居るのかも判らない。

 ローザン・エイメル伯爵夫人に聞けば良いことなので、三人の首を斬って遠くに跳ばす。


 《又面倒事か》


 「逆恨みもいいところだね。恨むのなら、馬鹿なお兄ちゃんを恨めって」


 《然しその伯爵夫人は何処に居るのか知らないが、俺達がこんな所に居るのを良く知ってるな》


 「そりゃーあれだ、お節介なバルズの領主ゲーレル子爵かメラートの領主オスト伯爵辺りの勘ぐりで、俺達の行き先は知れ渡っているはずだ」


 《やっぱり王家の御用で、隣国に潜入したと思われているのか?》


 「ゲーレル子爵も結構お節介だが、俺はメラートのオスト伯爵辺りが広めたと思っているよ。好好爺然としていたが、抜け目のなさが隠し切れていなかったからな。自分の株を上げる為に俺と知り合いだと吹聴して、立ち位置を上げているんだろう」


 《こうなると、転移魔法の事は貴族の間では知れ渡っていると思って間違い無さそうだな》


 「はあー、憂鬱だねー」


 * * * * * * *


 ヘルズの町からジエット迄6日掛かって到着したが、入場門で冒険者カードを渡すと衛兵達が騒めきだし、警備隊長に依って領主の館に連行されてしまった。

 此処からは行きの逆バージョンで次々と領主の馬車で隣の領地まで送られヘラルドン王国の王都ラクセンまで歩く事も無く到着してしまった。

 絶対自分の領地をウロウロされたくないので、馬車に乗せて放り出せと思っているに違いない。

 王都内で何処にお送りしましょうかと問われてがっくりして、冒険者ギルドで降ろしてもらったが他の冒険者の目が痛い。


 《おいエディ、アイリの所に行こう。きっと待ってるぞ》


 「エルグの宿じゃ駄目なの」


 《アイリのおっぱ・・・胸に抱かれて眠りたいんだよ! 野郎と寝るのに飽きたんだ》


 「ローザン・エイメル伯爵夫人の居場所を調べて落とし前を付けてから・・・」


 《却下、そんな婆は逃げないから後で良い!》


 完全にエロ猫モードに突入していて手が付けられないので、諦めてアイリを訪ねる事にした。


 * * * * * * *


 《なあ、あれはアイリだろう》


 「だろうな、一緒にいるのはメイドのサーミャかな」


 《だな、で、後ろにいる奴等は明らかに二人の後をつけているな》


 「そう見えるよな。距離は離れているが、視線がアイリから離れない。時々アイリの周囲を見るだけとは明らかに不審者だな。クロウ奴等の後ろに行って何を話しているのか聞いてきてよ」


 《あいよ》


 バッグから飛び降りると、トットットッと男達の後ろを歩き出した。

 猫って便利だね、誰も疑わないから何処にでも行ける。


 《駄目だ、此奴等一言も喋らないぞ》


 《アイリは家に帰っているようだから、住宅街の近くに来たら奴等の後ろに跳んで確かめてみるよ》


 アイリはサーミャと楽しそうに話しながら歩いているが、つけられている事に気づいてない。


 《クロウ行くよ、少し横にずれてよ》


 気配を消し男達の真後ろにジャンプし声を掛ける。


 「あんた達アイリに何か用かい」


 〈バッ〉って音がする様な勢いで振り向いた二人は、瞬時に左右に分れて身構えて油断がない。


 「中々の手練れの様だな」


 俺の手に鉄棒が握られているのを見てそろそろと手が腰の剣に向かう。


 「此処で刃物を出すかねぇ、止めた方が良いよ」


 「それはお前の方だ、見かけない奴だな」


 俺の頭に???マークが多数点滅している、何か話がちぐはぐだし一人が笛を出して吹き始めた。

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