エピローグ 魔法少女(たち)の日常

第47話 真冬の日常

 真冬と夏美が闇落ちし、元に戻ってから一週間の時が経った。

 所咲商店街には平和が訪れている。

 今日は日曜日。

 真冬は本当に記憶を消して回ったらしく、商店街の誰もあの日の事は覚えていない。

「遅刻遅刻~……!」

 朝になって制服に袖を通しかけている真冬がリビングに現れる。

「こら、ちゃんと制服を着てから来なさい」

「ごめん、お父さん」

 謝る真冬の頭の上をイルカの妖精が飛んでいく。

「も~、真冬はちゃんと起こしたのに起きないんだから」

 あの事件を経て一つの変化があった。

 ネオが堂々と湊と真冬の前に顔を出すようになったということだ。双方の秘密がなくなり、隠れている必要がなくなったのだ。

「いただきます!」

「はい、どうぞ」

 湊が作った朝食を食べる。

「昨日、ラファエロの魔人が出たらしいんだが、真冬。大丈夫だったか?」

「ブッ……!」

 真冬が飲んでいた牛乳を噴き出しかける。

「え、え、どうして知ってるの?」

「丈から聞いた。警察だから、街の異常は耳に入ってくるんだよ。パソコンの魔人だと聞いたけど、問題なく倒せたんだな」

「……お父さん、家で魔法少女の話はやめて。好きならわかってるでしょう? 魔法少女活動は」

 唇を尖らせる真冬。

「そうだな、皆にはナイショだからな。普通にする話じゃないよな」

「心配?」

 不安げに真冬が湊の顔を覗き込む。

 湊は安心させるように微笑んだ。

「心配はしていないよ。僕は娘を信じているからね」

「お父さん、ありがとう。いやぁ~、お父さんも理解を示してくれて、夜にもラファエロの怪人は出なくなったし、最近魔法少女活動がだいぶ楽になったよ。今度近所にショッピングモールができるし、毎日が楽しいよ」

「…………」

「お父さん?」

 何故か目を逸らす湊に、首を傾げる真冬。

「あ、い、いや……違うんだ。ショッピングモールができるから、商店街の活気がなくなってきてね。それが心配なんだよ」

「そう、ならいいけど。じゃあ、行ってきます」

 箸をおいてあわただしくリビングから出ていく真冬。

「おい、ごちそうさまぐらい言ったらどうなんだ! ……ったく」

 湊は真冬が食べ終わった食器を片付けて、窓の外を見上げた。

「今日のこの空を守ってくれよ。真冬」

 空には晴天が広がる。

「さて」

 片づけが一区切りついたところで、湊はリモコンを手にソファーに腰を下ろす。


『みんな~、あつまれ~! 魔法少女ミラクル・ミライ! はっじまっるよ~!』


 八時半、いつものように『魔法少女ミラクル・ミライ』が始まった。

 ペン入れからペンライトを取り出し、振る。

「頑張え~、ミライ~~~!」

 こんな時間を作れるのも、真冬のおかげだ。ありがとう、真冬。魔法少女として頑張ってくれているからだ。

「信じるよ。恵さん。僕は真冬を」

 亡き妻、恵の遺影に向けて微笑みかける湊。

写真の恵も、笑っていた。

「そう、昼間はね」

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