第38話 彼女は変わる
真夜中の所咲商店街。
「ザルクシックス」を出た春奈は少しスキップをしながら家路をたどっていた。
若干微笑みながら鼻歌を口ずさんでいる。
「迷わず行けよ、行けばわかるさ……フフ……」
胸の中心を撫でながら、春奈は誰もいない商店街をくるくると回りながら歩いた。
♥ ♥ ♥
「ザルクシックス」に残された湊は、無言で店じまいを続けていた。
「そんな簡単に人は変われないものだね」
空中に浮いているネオが春奈がいなくなった扉を見ながらつぶやく。
「ネオ君、君は妖精だから人の心はわからないだろう? 君は春奈ちゃんの何を見ていたんだい?」
「何をって、散々迷っている姿だけど」
「人はそう簡単に変われないというのは正しくない。そうすぐには変われないというのが正しい。川の流れ、木々の年輪と同じように変わらない人間なんていない。人間は絶えず変わり成長していく、それがゆっくりだからわからないだけさ」
「……そういうもの?」
「君は仮にも子供に夢を与える妖精なのだからもっと人間を見た方がいい。春奈ちゃんを見て気が付かなかったのか? 強い瞳を持っていた。この店に来た彼女は一切俯かず、瞳を逸らさなかったぞ」
「………」
ネオは春奈がやってきた後のやり取りを思い返す。
確かに、彼女はふさぎ込むことはなかった、よく沈んでいた印象がある娘だったのに。
だけど……、
「いや、バリバリ目を逸らして俯いてたよ?」
「…………」
一々小うるさいイルカの妖精を、湊はやっぱりワインセラーに放り込んだ。
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