第三章 反抗期が過ぎて闇落ちした娘たち
第36話 少女たちが家出した後
旅行から帰ってきて三日の時が流れた。
あれから、真冬も夏美も家には帰っていない。春奈も店に顔を出さないので二人がどこにいるのかもわからない。
茫然としながら、「ザルクシックス」でグラスを拭く毎日だ。
暇なときはがむしゃらに外に出て真冬の姿を探すがどこにもいない。
丈に至っては帰ってきてから熱を出してずっと寝込んでいる。
「真冬……どうして、一体何がいけなかったんだ」
「どう考えてもあのイカレタ格好ですよ」
気が付くと、バーのカウンターの上にイルカの人形、もとい、ネオがいた。
「ネオ君」
「わかったでしょう。はたから見るとあの格好は気持ち悪いんです。おぞけが走るんです。正しくないんです。大人しく娘に魔法少女を任せなかった罰が当たったんですよ」
「…………」
このムカつくイルカをワインセラーにぶち込んでやろうかとも思ったが、言ってることは正しいのでやめておく。何よりその気力がない。
「ネオ君、僕はどうしたらいい? どうして、真冬はラファエロの怪人になってしまったんだ?」
「春奈さん、ローズブーケがダークシードっていう悪の種を二人に食べさせたんですよ。柿ピーと一緒に」
「柿ピーと一緒にかい?」
念のため、確認のために問いかけるとネオは頷いた。
「だから、かみ砕いたんだよ。バラバラになったダークシードは発動しないかと思った。ローズブーケの正体を明かされたときに。心の傷をつけられたはずのに発動しなかった。ダークシードは心の傷をきっかけに人の心を闇に染める種なのに……」
「ところが……ちゃんとその機能は生きていた」
「そう。そして、自分たちの父親が魔法少女の格好をしている事実に深く心を傷つけられ、闇の魔法少女、ネリネブーケとサンシャインブーケとなった」
「あぁ……」
湊はうなだれる。
まさかそんなものが植え付けられていたとは、しかもそのタイミングで魔法少女マジカルロットンの格好をしていたのがバレるとは。自分の間の悪さを呪うばかりだ。
フェアリージュエルをポケットから取り出す。
「これは、やはり真冬たちに返さなければダメか……」
「当然だよ⁉ それにフェアリージュエルには浄化作用がある。もしかしたら、それが真冬と夏美の手に収まったら、ダークシードの邪気を払えるかもしれない」
「…………」
湊はフェアリージュエルを完全に真冬たちから取り上げるつもりだった。自分の娘が超常の力を持つ怪人と戦うなど、親としては気が気じゃない。その点は丈と同じ意見だ。だったら、自分自身が戦うと。
「その驕りがこの顛末を招いたということか……」
「おっさん……」
悔し気に眉間にしわを寄せる湊にネオが同情する。
二人が自分たちの無力さに打ちひしがれていた時だった。
カランカラン……。
扉の鐘がなる。
「こんばんは~」
眼鏡をかけた巨乳の女性が来店する。
彼女を見た瞬間、湊の顔は驚愕に染まった。
「春奈ちゃん……?」
「あ、一区切りついたんでようやく来れました~」
本郷春奈が何事もなかったかのように微笑んでいた。
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